「世界遺産、モン・サン・ミッシェルに泊まりたい!」
「ハワイでフラダンスを踊りたい!」
個人旅行では叶えられないさまざまな夢。
そんな夢を実現するため、パッケージツアーの企画造成部の社員たちは西へ東へと奔走します。
海外渡航が自由化されたのはわずか半世紀ほど前のこと。それまで旅行で海外に出かけるというというのはかなりハードルの高いことでした。
『JALパック「いい旅、あたらしい旅。」の創造者たち』(株式会社ジャルパック/著、ダイヤモンド社/刊)は、今年50周年を迎えたパッケージツアーの草分け的存在、「JALパック」ブランドの歩みと今後の展望、リアルあぽやんの仕事ぶり、ツアーコンダクターの笑顔と涙、企画造成チームの奮闘の様子など、旅行会社の舞台裏を余すところなく紹介した一冊となっています。
■ジャンボジェットの退役チャーターフライトはいかにしてつくられたのか?
初日の出や金環日食、空飛ぶ自由研究や退役ジャンボなど、ジャルパックではこれまで数々のチャーターフライトを企画実行してきました。
中でもジャルパックの代名詞ともいえるハワイへのチャーター便『ファミリージェットで行く ワイキキ六日間』では、子どもの泣き声、授乳、オムツ交換といった小さな子連れ家族の悩みを一つひとつ解決することで、夢の旅を実現しました。
参加者を子連れの家族だけに限定することで、機内で子どもが泣いても周囲の目が気になりにくい環境を作り、授乳ゾーンやオムツ台の設置をすることで、幼児がいてもストレスなく旅をすることができるようになりました。結果、『ファミリージェット』は快適な家族旅行を実現する夏の人気商品として定着するに至ったのです。
■ワイキキ、オペラ、モン・サン・ミッシェル! 有名観光地開拓の舞台裏
フランスを旅するのなら絶対に外せないのが、世界遺産「モン・サン・ミッシェル」です。
パリからの距離約300㎞。およそ東京―仙台間に相当するこの修道院は、パリからの往復になんと丸一日を要する遠方の地です。かといって島内の宿泊施設は小規模なものが多く、パッケージツアーとして大人数の予約を抑えるのは難しい。モン・サン・ミッシェルを観光地として開拓するのは非常に困難なことでした。
それでも思う存分モン・サン・ミッシェルを堪能してもらいたい。そんな強い思いからジャルパックの企画造成チームは現地のホテルと直接交渉を開始。しかし多人数の予約が万が一キャンセルになれば小さなホテルには大きな痛手になるとして、当初島内のほとんどのホテルがこの申し入れに否定的でした。
ジャルパックの社員たちはそれでも粘り強い交渉を続け、「二カ月前には予約状況を報告して、一カ月前には八割程度宿泊者を確定させる」などの条件を課すことで何とか宿泊許可を得ることに成功。「モン・サン・ミッシェルで一夜を過ごす」という希少価値の高いこの商品は大ヒットし、今ではモン・サン・ミッシェルの島内に泊まる旅行者の75%が日本人という観光名所に発展しました。
このような観光地開拓秘話は他にもあり、ジャルパックはその度にさまざまな努力を重ねて人々の夢を実現してきたのです。
1月20日に行なわれた記者会見では、ブランド誕生50周年を記念した特別商品として、世界遺産を中心とした18日間の世界一周ツアーなどを発表したジャルパック。
今回紹介した事例も含め、旅行プランはユニークな発想だけで作れるものではありません。実現までの間に立ちはだかる数々の障害をなんとかクリアして、夢のあるツアーを実現させようと懸命に道を拓いてきた社員たちの熱意がそこにはあります。いい旅を提供したい。そのひたむきな思いで走り続けた50年の軌跡が本書から垣間見えるはずです。
本書を読むことで、気ままな一人旅が好きという人も、個人旅行にはない、パッケージツアーならではの魅力を発見できるのではないでしょうか。
(新刊JP編集部)
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