日本が抱える国際問題でフォーカスされるものの多くは、第二次世界大戦以前や戦中に起因しています。そして、ここ近年、日中・日韓関係のこじれの火種ともなっている従軍慰安婦問題や南京事件の論争について日本の政治家が言及し、それが“失言”として批判されることもしばしばあります。
日本は第二次世界大戦で連合国側に敗北した「敗戦国」。だからこそ注視すべきなのが、「日本人たちの根底に流れている歴史観」です。
イギリス人ジャーナリストで三島由紀夫とも親交の深かったヘンリー・S・ストークス氏は、著書『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』(祥伝社/刊)の中で、日本の歴史観は「戦勝国」に押しつけられた歴史観だとして、そこに日本の国際問題の元凶が詰まっていると指摘しています。
ストークス氏は1938年にイギリスで生まれ、1962年から記者活動を開始。1964年にフィナンシャル・タイムズ社の東京支局初代支局長として来日します。
幼少期のストークス氏はバリバリの「戦勝国」史観の持ち主で、日本を嫌悪していたといいます。なぜなら、イギリス人にとって日本は「侵略国」だからです。第二次世界大戦中、アジアにあったイギリスの植民地を日本が侵略し、アジアにおける大英帝国の威信をズタズタにした憎き相手なのです。
ストークス氏にとって、幼い頃の日本人のイメージは「野蛮で、残忍」だったというのだから、相当なのでしょう。
しかし、少しずつ日本に対する認識を改め、来日後は、三島由紀夫らとの邂逅などを経て、「戦勝国史観」を押しつけられる日本に気づきます。
そんな背景から、「戦勝国史観」が有色人種への差別思想が込められていること、何より日本人がその歴史観を受け入れてしまっていることに警鐘を鳴らしているのです。
また、本書の中では、戦争で起きた問題や事件に対して、ジャーナリスト的な見地から触れています。その一つが「南京大虐殺」です。
来日時のストークス氏は南京事件があったことを疑うことなく信じていたそうですが、今は正反対の指摘をしています。ストークス氏のアプローチ方法は歴史を丁寧に調べ直すとともに、「どのように報道されたか」についても触れるというもの。ジャーナリストとしての体験を元にして、「南京大虐殺」について持論を重ねていきます。
ストークス氏の主張はとてもシンプル。それは、日本人自身が世界史を再び読みなおし、占領軍が押しつけた「戦勝国史観」から抜け出さなければいけないということです。イギリスで生まれ育ち、来日したストークス氏は、日本側でも連合国側でもない第三者の視点から、二十世紀の歴史を見つめることができたといいます。
歴史の正体とは何か、自分たちは今までどんな歴史を信奉してきたのか。本書では、戦後日本を“呪い”のように苦しめてきた「戦勝国史観」の正体が暴かれています。
ほかにも、三島由紀夫が死を賭けてまで問うたもの、ストークス氏がこれまで会ってきたアジアのリーダーたちの実像、そして、日本人は一体何をすべきか…。本書のストークス氏の言葉は、今の日本人に必要なものを教えてくれるはずです。
(新刊JP編集部)
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