仕事中にこんな言葉を使ったり、もしくは逆に言われたりしたことはないでしょうか。
「もっと議論をすべき」
「顧客の立場に立て」
「主体性を持って取り組め」
「一人ひとりができることをする」
「コミュニケーション能力」
「ウィン・ウィンの関係」
こういう言葉が飛び交うと、なんとなく“ビジネスの現場”感が漂ってきますが、それに警鐘を鳴らすのが小論術や論理的な表現を指導する学校を主宰している吉岡友治さんです。
吉岡さんの著書『その言葉だと何も言っていないのと同じです!』(日本実業出版社/刊)によれば、世の中にはこうした「すごく意味がありそうなのに、よく考えるとわからなくなる言葉」がたくさんあり、これらの言葉が交わされると思考停止に陥ってしまうこともあるそうです。
では、その中からいくつかをご紹介しましょう。
■「顧客の立場に立て」
「顧客の立場に立って物事を考えろ」ということは、職場だけでなく、ビジネス書などでもよく言われています。
確かに相手の立場で考えるのは大事なことのように思えますが、著者の吉岡さんによればこの言葉は、「命令する人間が『顧客』という第三者を引き合いに出して、自分がその代理人として振る舞うために使われることがよくあるといいます。
つまり、この言葉の裏にあるのは、「お客様は絶対」という価値観であり、命令する側はその価値観を自在に振りかざすことができるのです。顧客になりかわって自分の恣意的なビジョンやイメージを盛り込むことが可能になり、自分の考えを正当化できる、とても都合のいい言葉だといえます。
もし、この言葉を言われたら、会話の中の「顧客の立場」が本当は誰の立場なのか、気をつけてみましょう。
■「主体性を持って取り組め」
分からないことがあって聞きに行くと、「自分で考えろよ、主体性がないんじゃないか」と逆に叱られたことはないでしょうか。
そもそも「主体性」とは、他人から独立した自分の判断で行動する、という意味です。しかし、「自分の判断で全部やってもいい」というビジネスの現場なんてまずありません。本来の意味から考えると、プロジェクトの現場に「主体性」は存在しようがないのです。
プロジェクトの目標に対してうまく事が進まないときに上司がこの言葉を使う場合、責任を部下に押し付けようとしている可能性があります。吉岡さんは「目標は発言者が一方的に決めて、命令されたほうがその実現に取り組むという奴隷的状況を隠蔽する言葉」だと指摘しています。
何気なく言ったり言われたりするなかで、どのような意味かよくわからないまま使われ続けている言葉は数多くあります。そうした言葉に振り回されてしまうと、問題解決から逆に遠のいてしまうこともあるでしょう。
自分がこのような言葉を使うときには注意し、言われたときにはその本当の意味を探るってみる。本書はビジネスの現場のコミュニケーションの基本として重宝しそうです。
(新刊JP編集部)
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