「恋愛」と「マーケティング」。この2つは全く異なるものだと思ってはいませんか? 実はとてもよく似ています。恋人を作るためにすること、恋人と長く付き合っていくためにすることそのものが、マーケティング活動ともいえるのです。
マーケティングとは、ニーズを掘り起こし、自社の商品の価値を高め、商品を買ってもらうために行う活動といえますが、恋愛にそれを当てはめれば、自分自身が商品であり、自分をPRすることで異性の中の自分の価値を高める活動ということになります。つまり、マーケティングの手法を学べば、恋愛も上手くいく可能性があるのです。
マーケティング・コンサルタントの武井則夫さんが執筆した『選ばれる理由 どうしても売上と利益が増えてしまう心理マーケティング』(「元気が出る本」出版部/編集、現代書林/刊)は、自社の商品が顧客に選ばれるようになるための心理テクニックを教えてくれる一冊。事例が豊富なので、マーケティングの知識に疎い人にとっても実用的です。
■どの商品を手に取るかは“値段”以外で決まる?
私たちは物を買う時に、値段、商品の質、風貌など、いろいろな条件の中から“選んで”決めますよね。全ての“買う”という行動について共通していることは、“多くの商品の中から選んでそれを買っている”ということ。つまり、商品は他の商品と“比べられた”上で手にとってもらっているのです。
例えば、同じ青森産のリンゴが、3つ並んでいます。
一つは98円、次は120円、そして最後が300円です。
色つやも同じで大きさも似たようなサイズで、ただ違うのは値段だけ。そんなとき、主要な判断基準になるのはその「値段」になります。どのリンゴもほとんど変わらないならば、安いものを買おうという人は多いはず。
では、120円のリンゴに「今が旬!」「蜜がたっぷり!」といったキャッチコピーを、さらに300円のリンゴには「無農薬!化学肥料不使用!○○さんの作ったリンゴ」「お一人様3コまで」などの売り文句を書いたPOPをつけたとします。するとどうでしょうか。何もなかった98円、120円、300円のリンゴの見方は大きく変わるはず。
実際に、武井氏が講演でアンケートをとってみたところ、どのリンゴを選ぶのかの比率は大きく変わったそうです。値段以外の情報がなかったときに比べ、300円を選ぶ人はほぼ皆無から4割に上昇、逆に98円のリンゴを選ぶ人は約8割から、2割に落ち込んだといいます。
つまり、私たちは商品を選ぶときには、そこで与えられた情報に基づいて決めているということになります。
■「納得して選ぶ」という環境づくりがポイント
もう一つ、紹介しましょう。よく「松・竹・梅」などのように、私たちの生活の中では3つの中から一つを選ぶことが多くあります。これも、マーケティング的に重要なことなのです。
購買心理として、選択肢が2つしかないと私たちは「選ばされた」という感覚に陥りやすくなります。そこに1つ増やして選択肢を3つにすると、「自分で選んだ感」が出てくるのです。2つはベター(どちらがよりいいか)な選択ですが、3つはベスト(どれが一番いいか)な選択になるということです。
その根底には、「いい買い物をしたと思いたい」という心理が働いています。そして、「いくつかの選択肢の中から自分で比較して選んだ」という満足感と納得感が生まれるのです。
ただ、選択肢が多すぎるのもよくありません。あまりにもたくさんの商品を並べていると、「選びにくいのでこの店では買わない」という判断を下されることがあります。たくさんの商品を並べている小売店や通信販売のウェブサイト、カタログなどは、「ウインドウショッピング」をする顧客にとってはいいのですが、「買う」という行動まで促せなくなりがちなのです。
では、仮にこの方法論を恋愛に当てはめてみるとどうでしょうか。
例えば合コンを行うときに、たくさん人がいるよりも3人一組になったほうがいいと考えることはできるはずです。確かに、3人くらいのほうがじっくり吟味できるし、2者択一よりも気が楽と感じませんか? 逆に人数が多いと、ただの“飲み会”化してしまうような気もしますよね。
『選ばれる理由 どうしても売上と利益が増えてしまう心理マーケティング』は、購買意欲をかきたてる心理マーケティングの方法論が大変分かりやすくつづられています。恋愛テクニックはほとんど書かれていませんが、それを知ることによっていろいろな場面で応用できるはずです。
自社の商品が消費者に選ばれるために、何が必要か、何が欠けているのか、それを知るために必要なマーケティングのイロハを参考にすれば、業績を伸ばすだけでなく、恋愛や人間関係も上手くいくかも?
(新刊JP編集部)
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