『すべてが見えてくる飛躍の法則』(アスペクト/刊)の著者である石原明さんの対談連載“人称対談”第四回は、Terra Motors株式会社代表取締役の徳重徹氏をお迎えして行われた。
徳重は会社を立ち上げた当初から、グローバル市場で戦うことを念頭に事業を展開。電動バイク、電動シニアカー市場で設立から2年で販売台数4000台を達成しているほか、ベトナムやフィリピンなどアジア各国にも進出の足掛かりをつくっている。
ベンチャー気質溢れる徳重氏と石原さんはどんな対談を行ったのか? 対談前編となる今回は、徳重氏が起業するまでの経緯が明かされる。
(以下敬称略)
■親からは“起業禁止”、でも会社を立ち上げる
石原「徳重さんは、どんなことがきっかけでビジネスをはじめたんですか?」
徳重「もともと大学を出て、損保会社の三井住友海上に5年半勤めていたんですが、そこでは新入社員のときから経営企画のような部署に入りまして、会社の全体が見える仕事をしていました。とてもやりがいがあったし、良い評価を頂いていたんですけど、29歳のときに自分の人生を考えてみて、やっぱりベンチャー企業をやりたいなと思って会社を辞めました」
石原「大企業でやりがいもあって、それで良い評価も受けて、順風満帆じゃないですか。普通、辞めないですよね?」
徳重「そうなんですけど、ベンチャーを立ち上げたいって想いが勝っていました(笑)それで、ベンチャーといえばシリコンバレーだったので、そこを目指して、まずはLAからアリゾナに出て、そこでベンチャー企業のインキュベーションを5年半ほどしていました。とはいってもハンズオンでコミットするというのが基本なので、日米のベンチャー企業の良いところや悪いところを見て、勉強していましたね」
石原「その経歴はとても面白いですよね。もともと保険会社に入る前から、ベンチャーを立ち上げたいと思っていたんですか?」
徳重「昔から気質的にそうなんだと思います。学生のときから起業家たちの本を読み漁っていましたし…。でも、親からは絶対に会社をやってはいけないと言われていたんですよ(笑)!」
石原「えっ! そんな家訓があるんですか?」
徳重「家訓ではないんですけど、うちの親父がダメと言っていたんです。親父はまるで『巨人の星』の星一徹みたいにとても厳しくて(笑)。僕は真面目でしたから、『それは違うんじゃないか』と思っても、親の言うことは聞いていましたね。 でも、どこかで『人生が親父に決められている』っていうところがあって、考えた挙句、そのまま道に乗っかるという選択肢を手放しました 」
石原「今の徳重さんを見ると、そんな風には見えないですよ。これは褒め言葉で、全く真面目じゃなさそうなんです(笑)。まさしくベンチャー気質の中で生きてこられたのかなと思っていましたから」
徳重「そんなことはないですよ(笑)それで、アメリカではベンチャーってすごく重要な位置を占めていて、まさしく『チェンジ・ザ・ワールド』を背負っているんですよ。雇用もそうだし、国の発展そのものをけん引してるんです。
逆に向こうから見た日本っておかしく見えるんですよ。大企業がイノベーションを起こす機動力はないのに、ずっと社会の中心にのさばっていて、ベンチャー企業はあるにはあるけど、成長して10億円から20億円規模ですからね。ベンチャーが産業をつくるというカルチャーはないと思います。
だからこそ、日本でベンチャーを立ち上げる意思は強まりましたね。日本を何とかしなきゃいけない!って(笑) 」
石原「今話題の『海賊とよばれた男』とダブってみえると聞いていたんですが、まさしくその通りです(笑)すごいですね」
■昔の日本はベンチャー気質に溢れていた!
石原「テラモーターズは電動バイクを日本から世界に広げていくビジネスをしていますけれど、この発想ってどこからきたんですか?」
徳重「シリコンバレーに行ったときに、昔ITをやっていた連中が電気自動車を開発していたんですよ。最初は驚いていたんだけれど、これは産業構造が大きく変わるということに気づいて。アナログからデジタルに移り変わったときに既存の大手電気機器メーカーが凋落していったように、EV(electric vehicle)で同じシフトチェンジが起こるんじゃないかと思ったんです。しかもその市場は世界ですよ。
日本の技術を世界へ発信するというのは起業前から大事にしていた軸ですし、自分が考える“メガベンチャー”というビジネスサイズになることも可能だと思いました。でも、これって日本から見れば、ヤマハやホンダがいる中でどうやって立ち向かおうとしているの? って笑われることなんですよ」
(昔の日本はベンチャー気質に溢れた企業だらけだった!? 後編は8月9日配信!)
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