見出し:リーダーとメンバーの信頼を深めるには“一緒に本当の危機を乗り越える”
リーダーの立場にいて「自分でやったほうが確実(はやい)!」と思ったことがないという人はそういないでしょう。
しかし、それではメンバーの成長の速さが鈍くなってしまい、ひいては組織の成長にもつながらなくなります。では、「自分でやったほうが確実(はやい)!」とよく思ってしまうリーダーはどのように考え、行動すればよいのでしょうか。
その答えを『自分でやったほうが確実(はやい)! がなくなる任せる技術』(明日香出版社/刊)の著者である西邑浩信さんにうかがいました。今回はインタビューの後編です。
(新刊JP編集部)
■“どん底の経験”が真の信頼関係を築く!
―西邑さんご自身は「メンバーに仕事を任せたけれど、結局、「自分でやった方が確実」と考え、自分で対応してしまった」というご経験はあるのですか?
「そうですね・・・私が20代後半の頃がちょうどバブル全盛期だったので、仕事も膨大にあったし、若いうちからリーダー的な役割で、どんどん後輩ができて、その人数も年々増えていきました。だから、必然的にメンバーに仕事を任かせざるを得なかったところがあります。でも、ちゃんと任せられていたか、というと、正直、偉そうなことは言えないですね。先ほどお話したように、仕事を単に『振る』ことが多かったような記憶があります(笑)」
―自分の配下にメンバーがどんどん増えるわけですよね。私だったら追い詰められそうな気がしますが、大丈夫だったのですか。
「正直、突き上げのプレッシャーはかなりありました。自分が超高速で成長しないと、メンバーに見切られ、抜かれてしまうので。あと、“任せることを任せる”ということをしていましたね。チームをもっと組織化して、リーダーの仕事も分散するような対応です。それが良かったかどうかわかりませんが、おそらく、そんな状況があったので、『自分でやった方が確実(はやい)』という考えが早い段階で手放せていたのかもしれません。」
―西邑さんが自分の配下のメンバーと信頼を深めたエピソードがあれば教えて下さい。
「そうですね・・・。信頼が深まるときというのは、共通の深い体験をしたとき、お互いのことを深く相互理解ができたときですね。大変なトラブルや問題を一緒に苦労して乗り越えた時は、まさにそんな時だったと思います。
私は会社員時代、お客様の情報システムのアウトソーシングの仕事をしていたのですが、重大なトラブルで、お客様の業務を支えるシステムが完全に止まってしまうような状況が何度かあったんです。企業様の日々の仕事を支えているシステムなので、問題があった際のプレッシャーは想像できないほど凄まじいのです。そんな状況下で、何日も、何日も徹夜して、最終的にトラブルをメンバーと共にクリアしたときに、本当の信頼関係が生まれたことを何度も実感してきました。
最初から良い関係性ってあまりないと思います。本当の危機に陥ったときに、リーダーが泰然自若として、矢面にたって、メンバーたちと共に乗り越えることができれば、信頼はすごく深まると思いますよ。」
―それは壮絶なエピソードですね…。でも、確かにトラブルを乗り越えると、一体感が生まれますよね。あと、私がこの本で印象的だったのが、本書の第7章の「成果も失敗も受け入れる」の項目です。漫才のアドリブやジャズの即興演奏を例にして、目の前のことで起きたことをすべて受け入れて、それは失敗でもミスでもないと考える。その上で、自然に楽しくできる最善の対応を行うリーダーがいれば、メンバーは安心して自分の仕事ができると思います。ただ、そこまで器の広いリーダーはなかなかいないように思いますが。
「まあ、器というより、リーダーとしての経験や成功体験が必要かもしれませんね。でも、まずここで一番重要なのは、失敗をどう定義するかということなんですよ。仕事は、最終的な『成果』で判断されますから。一番いけないのは、失敗を失敗として、その瞬間に止めてしまうことです。ジャズでも漫才でも、途中で『すいません、間違えました!』と言って、そこでやめてしまうと、皆にミスしたことが分かって、その時点で失敗になってしますよね。でも、端から見たらどこが失敗したのか分からないかもしれない。失敗も途中経過と捉え、最後まであきらめずに、成功するまで続けることが大事になります。失敗を成功までの通過点と捉えられるかがポイントですね。」
―『自分でやったほうが確実(はやい)!がなくなる任せる技術』をどのような方に読んで欲しいとお考えですか?
「現在、自分の仕事の任せ方、メンバーや後輩の育成方法に悩んでいるリーダー、自分自身が次のステージに踏み出すためのキャリアのきっかけを欲しいと思っている人たちの何かしらのヒントになればと思います。どんな仕事でも、ちょっと見方を変えるだけで、楽しくなるはずです。自分の人生の貴重な時間を費やす仕事を、もっと楽しみたい、『やらねば」や『やるべき」から『やりたい」にシフトしたい、と思っている人は、きっときっかけになると信じています。」
―では、そんな悩めるビジネスマンやリーダーの読者の皆さんへ、応援のメッセージをお願いします!
「“任せる”ということは、組織で仕事をするビジネスマンにとっての永遠のテーマなんです。組織やチームで仕事をする限り、どんな人も任せるときは必ずやってきます。でも、その時にうまく自分の仕事を任せることで、自分もメンバーも共に成長でき、仕事が面白くなる。仕事を“やりたいこと!面白いこと!自分ごと!”にすることでどんどん上手く回り出して、更に楽しくなると思っています。
誰しも、やりたいことが獲得できる人生のプロセスに入ることができるし、自由にやりたいことができるようになれる、と信じています。本書がそうなるためのきっかけになれば、本当に嬉しいですよね。」
(了)
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