6月1日、朝日新聞が、65歳以上の高齢者のうち15%が認知症であり、その数は2012年時点で462万人にのぼるという厚生労働省研究班の調査結果を報じました。
高齢化とセットで語られ、近年メディアで取り上げられることの多い認知症ですが、その約7割がアルツハイマー型認知症、いわゆる“アルツハイマー病”です。
アルツハイマー病は“第3型糖尿病”とも呼ばれるように、脳内のインスリンの効きが悪くなり、神経細胞がエネルギーであるグルコース(ブドウ糖)を使えなくなって死んでしまう、いわば“脳の糖尿病”。
これまで、“不治の病”とされてきたこの病気ですが、今その根本的治療の突破口となりうる物質が注目を集めているのをご存じでしょうか。
■自分の娘がわからない
アメリカの医師、メアリー・T・ニューポートさんの夫・スティーブに若年性アルツハイマーの兆候が見られるようになったのは2001年頃のことでした。
医師として多忙な毎日を送るメアリーさんを支える専業主夫として完璧に家事をこなしていたスティーブさんが、娘たちの送迎を忘れがちになったのです。
その後も症状は進行し、彼が回収してくるはずの郵便物がおかしな場所で見つかるようになり、そもそも郵便局に行ったかどうかも思い出せないというケースが生じるようになります。他にも、探し物をしている最中に自分が何を探しているかを忘れてしまう、ひと月の間に3回も財布をなくすなど、その症状は日を追って顕著になっていきました。
2008年、スティーブさんに突然「ジュリー(メアリーとスティーブの娘)の父親は誰だっけ?」と尋ねられ、夫が娘のことはもちろん妻の自分のことさえわからなくなる日がそれほど遠くないことを覚悟したとメアリーさんはいいます。
■偶然見つけた物質がもたらした、劇的な症状改善
医師による検査で正式にアルツハイマーと診断されたスティーブをなんとか回復させたいと願うメアリーは、この病気の治療に効果が期待できる新薬の治験を探すことにしましたが、その望みは早々に打ち砕かれます。
スティーブさんの症状があまりに進行しすぎていたため、治験の参加資格を満たすことができなかったのです。
しかし、失意の中でもあきらめずに別の治験を探していたメアリーさんは、アクセラという小さなバイオテクノロジー企業が行った、ある治験の結果を見つけます。驚くべきことに、その治験では、多くの患者に症状の改善が見られたのです。
その治験で使用されたのは、MCTオイルと呼ばれる油で、これがココナツオイルから抽出されることを知ったメアリーは、早速ココナツオイルを自然食品店で買い求めました。
そして、「だめでもともと」という思いでココナツオイルを朝食のオートミールに混ぜ、スティーブさんに食べさせたのです。
効果はその日のうちにあらわれました。
正午過ぎに行われた治験の参加資格を調べる審査で、前日の審査よりも大幅に記憶力を改善させたスティーブさんは、それまで症状が進みすぎて受けられなかった治験を受けられるようになっていたのです。
その後もココナツオイルはスティーブさんに劇的な変化をもたらします。ココナツオイルの摂取を始めて一週間ほどで、彼の会話能力は如実に回復していきました。そして、2011年には沈みがちだった性格も快活になり、会話能力や記憶能力にも一定の改善が見られたといいます。
これは偶然ではありません。
『アルツハイマー病が劇的に改善した! 米国医師が見つけたココナツオイル驚異の効能』(メアリー・T・ニューポート/著、日向やよい/訳、白澤卓二/監修、ソフトバンク クリエイティブ/刊)には、MCT(中鎖トリグリセリド)と呼ばれるタイプのオイルがグルコースに代わって脳にエネルギーを供給することが明かされ、中鎖トリグリセリドを多く含むココナツオイルのアルツハイマー病への効果が科学的に説明されています。また、彼と同じようにココナツオイルで症状を改善させたアルツハイマー病や認知症患者の声も多数紹介されています。
ココナツオイルによる食餌療法について「やってみて損はない」と語るメアリー。
効果的な治療法が見つかっていないアルツハイマー病の研究が、今回の発見により、今後、大きく前進するかもしれません。
(新刊JP編集部)
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