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山崎ナオコーラと折井あゆみの異色“恋愛談話”

 元AKB48の一期生で、現在は女優として活躍中の折井あゆみさんが、『人のセックスを笑うな』(河出書房新社/刊)の作者である山崎ナオコーラさんの短編集『論理と感性は相反しない』の朗読に挑戦。3月1日にオーディオブック化され、オーディオブック配信サービス「FeBe」にて発売される。

 『論理と感性は相反しない』は神田川歩美という24歳の女性会社員と、矢野マユミという28歳の女性小説家の2人の主人公がオーバーラップさせ、心の機微を描いた作品で、2008年に講談社から出版され、2011年には文庫化された。
 今回はそんな本作で描かれている登場人物の恋愛模様を中心に、折井あゆみさんと山崎ナオコーラさんの対談がセッティングされた。作家と女優の異色対談は、どのような方向へ行くのか?

◇   ◇   ◇

折井「まずは私の方から質問をさせていただきますが、『論理と感性は相反しない』がオーディオブック化するというお話をうかがったときはどう思われましたか?」

山崎「嬉しいな、と思いました」

折井「活字で読むのと、音声で聴くというのは、少し違った印象があると思うんですね。私がこの作品を今回読ませていただいて、ナオコーラさんが書いた世界観を壊さずに私の色を入れられたら、と思っていたのですが、イメージと違うなというところはありましたか?」

山崎「私が文章を書いているときは、声を想像しないので、朗読するとこんな風になるんだという新鮮さがありました。あと、折井さんの声がすごく聴き取りやすかったです。舞台でも活動されていらっしゃるからでしょうか」

折井「ありがとうございます! 声は以前から大きいと言われていたのですが、朗読の場合は特にゆっくり読むようにしました。音だけなので、伝わりやすいように。また、キャラクターの演じ分けも意識しました。家でこっそり練習をして」

山崎「本当ですか、一人ですか?」

折井「はい、一人で(笑)」

山崎「でも、いいですよね。お風呂とかで声を出して、練習するのって」

折井「この『論理と感性は相反しない』は短編集なのですが、特に思い入れの強いお話やキャラクターはいますか?」

山崎「やはり主人公の一人である神田川歩美ですね。そういえば、折井さんと同じ名前なんですよね」

折井「そうなんですよ。私は平仮名で歩美ちゃんは漢字ですけれど。だから、私も運命的なものを感じましたのですが、この神田川歩美ちゃんが主人公になって進んでいくお話がいくつかあって、全作面白いのですが、最初は恋人の真野秀雄くんと一緒に住んでいる話から始まって、後半の方で二人は別々の道を歩んでいる『アパートにさわれない』が特に気になりました。歩美ちゃんが成長したというか、大人になったと思ったんですね。世間では恋愛をしてお別れするときに、女性よりも男性の方が引きずるっていうじゃないですか」

山崎「言いますよね」

折井「この作品を読んだたき、まさにそれかなと思いました」

山崎「折井さんは引きずりますか?」

折井「(笑)私は引きずるタイプですね。そこは歩美ちゃんとは少し違いました。真野秀雄くんは一緒にアパートがあった場所に行こうと誘ったりして、二人の思い出に二人で浸ろうとするところがありますけど、最後のところで、歩美ちゃんが拾ってきた石をそっと燃えないゴミに捨てたりして、その辺りが男女の違いをすごくリアルに描いているなと思いました。
ナオコーラさんは恋愛に対して、歩美ちゃん派ですか?それとも真野君派ですか?」

山崎「うーん、人は別れても、完全に別れることはできないと思うんです。これは友だちの関係でも同じで、二度と会わなかったり、思い出すことがなくても。一生、縁というのは残るんじゃないかな、と。だから、そんなに関係をスパッと切る気持ちになったことは今までにないと思いますね」

折井「そうなんですね。この『論理と感性は相反しない』の中にはナオコーラさん自身を投影しているのかなというお話もあって、『プライベートをなくせ』の主人公の矢野さんは小説家の設定ですが、これはやはりご自身の経験が含まれているんですか?」

山崎「神田川にしても、矢野マユミにしても…これを書いた時は20代の終わりだったので、赤裸々感というか、今しか書けない感じが出たらいいなと思って書いていました。読者に作者の赤裸々感があると思ってもらえたら本望ですね」

折井「ナオコーラさん自身は、この矢野さんというキャラクターと同じ気持ちを持っているんですか?」

山崎「そうですね、同じ気持ちです」

折井「恋愛に関しても」

山崎「そうだと思います。折井さんはもし恋愛をしたとき、相手に求めるものはなんですか?」

折井「なんだろう…。癒しかな(笑)」

山崎「ほっとできる、みたいな」

折井「そうですね。あまり自分が飾らずにいられる人がいいです。その点はナオコーラさんもそうじゃないかと思っていて、『プライベートをなくせ』のテーマにもなっていると思いますけど、作家さんはプライベートがあるようでないじゃないですか。恋愛をしていて、相手に『どうして分かってくれないの?』と思うことはありませんか?」

山崎「私は30歳を過ぎて、人に分かって欲しいという気持ちはなくなりました(笑)。でも、折井さんはまだありますよね」

折井「ありますね。そう思うことは結構あります。でも、これは女性みんなに聞きたい話かも知れない。どういうきっかけで、分かってもらおうという気持ちから抜け出したんですか?」

山崎「一人で充足できるようになったから、というのと、この仕事を通して分かって欲しいという欲を満たせるから、恋愛において理解を求めなくてもいいんですよね。愛情をもらえればいいな、って」

折井「素敵な考え方です。私、まだまだ分からないから(笑)。でも、やはり今この作品を読み返してみて、書いた当時と感じ方って違いますか?」

山崎「若いな、と思います。文章の書き方の癖とか。読点を打つ場所とか、癖はだんだんと変わるものなので」

折井「今回、この本を朗読させていただいて、言葉の使い方がすごく面白いし、読んでいて楽しかったです。最初にお話されたように、声に出すことを前提にしているわけではないので、そういう作品を声で表現していって、自分にとっても発見がたくさんありました」

◇   ◇   ◇

■オーディオブック版『論理と感性は相反しない』
http://www.febe.jp/special/logic_and_sensitivity
山崎ナオコーラ/著、講談社/刊、折井あゆみ/朗読、オトバンク/制作、完全版価格/1470円(税込)
*本作は文庫版をオーディオブック化しています。また、完全版購入者の限定特典として、2人の対談も聞くことができます。

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