誰にでも一つや二つは、"人には言えない性癖"を持っているのではないだろうか。そして、その性癖が文字通り"性"の快楽にまつわるものなら、その秘密は多くの場合より厳重に保護される。
しかし、秘密というものは「ばれたらどうなるだろう」「明かしてしまいたい」という欲求も伴うのである。
「第7回 女による女のためのR-18文学賞」(新潮社/主催)の受賞作『自縄自縛の私』(新潮社/刊)の主人公「私」もそんな一人だ。
ある地方都市の広告代理店で働く「私」は、自分に初めて部下ができた日、10年以上前、まだ学生だった時に、インターネットで見つけた「菱縄しばりの作り方」を見ながら、自分を縛ったことを思い出す。
当時の恋人に見つかってやめたそのひそかな快楽が、日々の仕事のストレスによってふたたび意識の明るみに浮き上がってきたのである。
そして、「私」は、麻縄やアイマスクをアダルトグッズ通販サイトで買い込み、自縛の性癖を再開、『自縄自縛ブログ』というブログを開設する。
こうして、自縛が「私」の日常生活でのストレスの解消法として根付いき、それは徐々にエスカレートしていく。
誰かに見られたら破滅というスリルが彼女を駆り立て、そしてついに決定的な事件が起こる...。
本書は表題作の『自縄自縛の私』を含めた6編の作品を収めた短編集。
そのどれもが、抗いがたい性癖を持つ女性たちが主人公に据えられている。
彼女たちの性癖は日常や過去からの逃避として、あるいは日常生活で心に溜まった澱を浄化するために存在するが、それは言いかえると、その性癖なくしてはうまく現実生活と折り合いをつけられないことであり、エロティックであると同時にシリアスでもある。
また、『自縄自縛の私』は映画化もされ、2013年2月2日から公開されている。
平田薫、安藤政信、綾部祐二(ピース)、杉本彩など個性的なキャストを、メガホンを取る竹中直人がどう活かすのか。
こちらも注目だ。
(新刊JP編集部)
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