「ファインアート」という言葉を知っているだろうか。
広く芸術全般を指す言葉だが、狭義としては、いわゆる芸術概念の一つで、単純にいえば芸術的価値に重きをおいた芸術のことをいう。Wikipediaには「とくに応用芸術、大衆芸術と区別して純粋芸術を意味する場合に使われる。」(「ファインアート」のページ、2013年1月15日閲覧)と書かれている。
そんなファインアート写真の第一人者である菅原一剛さんがこれまで10年以上にわたり、毎日撮影し続けてきたのは、世界中の「空」である。
『今日の空』(ソフトバンククリエイティブ/刊)は、2002年1月1日から2011年12月31日までに菅原さんが撮影し続けた空の写真から、選りすぐったものを集めた一冊だ。
この10年間、空の下で、いろいろなことが起きた。
2002年6月30日には、日本と韓国共同開催となったサッカー・2002 FIFAワールドカップの決勝戦が行われた。決戦の地となった横浜国際総合競技場上空には雲がかかり、空はうす暗かった。それでもブラジルとドイツの熱戦に世界中が夢中になった。
2006年3月3日は第1回 ワールド・ベースボール・クラシックが開幕した日だ。その日の東京・代沢の空は、太陽が雲に隠れて見えないが青空が広がっていた。
2008年1月13日の埼玉・秩父には冬晴れが広がっていた。その日、遠い異国の地ニュージーランドでは、オーストラリア人2名が初めてシーカヤックで全長1600キロのタスマン海を横断することに成功した。それもこの空の下の出来事だ。
そして、2011年3月11日、東日本大震災が起きた日の東京・豊洲の空も掲載されている。撮影時間は14時58分なので、地震が起きてから12分後。空はいつもと変わらぬたたずまいを見せている。
菅原さんのプロジェクトである「今日の空」は、書籍刊行に合わせて、iPhone/iPad向けアプリとしても発売されている(3月31日まで無料)。こちらは現在も毎日菅原さんが撮影している「今日の空」を閲覧できるほか、自分の撮影した写真をアップロードし、世界中の人とシェアできる。
何が起ころうとも空は常に私たちの上に広がっている。そしてその空は世界中につながっている。そんなことに気づかされる。
本書やアプリを通して、普段はあまりに気に掛けない空を見上げるのが楽しくなるだろう。
(新刊JP編集部)
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