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絶対やってはいけない部下の叱り方

 営業ほど、各個人の優劣がはっきりと出る仕事はありません。
 契約件数や売上金額など、成果が数字に表れてしまうからです。それだけに、契約を取れない、売上を立てられない営業マンの悩みは深いはず。
 そんな“売れない営業マン”に喝を入れ、顧客を満足させながら売上を立てる営業の極意を授けてくれるのが、『住宅営業という修羅場で26年 7000軒売った男が教える勝ち残る営業の36の掟』(サンクチュアリ出版/刊)です。
 今回は、前回に引き続き、本書の著者で株式会社ハウスプラザ副社長の斉藤孝安さんに、営業に必要な心構えや考え方についてお話を伺ってきました。

―斉藤さんはいち営業マンとしてだけでなく、マネージャーとしても大きな実績を残されていますが、斉藤さんが部下の営業マンを指導する際の方法を教えていただけますか。

斉藤「ある時は叱って、ある時は同じことを見過ごしたり聞こえないふりをすると、部下は混乱します。その時の気分で叱る上司だなと思われるのは絶対避けなければいけないと思います。例えばキャリア10年の部下と新人がいたとして、新人に対して叱ったことを10年目の人がやったとしたら、同じように叱らないといけない。叱り方は変えないといけませんけどね。とにかく、部下を迷わせるようなことはしてはいけないと思います。だから、これは絶対許されないということだけ教えて、あとは流れに任せていますね」

―伸びる営業マンとそうでない営業マンにはどのような違いがあるのでしょうか。

斉藤「やはり吸収力だと思いますね。素直さと言ってもいいと思いますが、人の言うことを受け入れることができるかどうか。例えば上司に言われたことに対して“上司と部下の関係だから言うんでしょ”とか“上下関係でそう言うしかないんでしょ”と思っちゃう奴はだめですね。自分のために言ってくれているんだと受け取れる奴は伸びると思います。
人の意見を聞いたうえで、“俺はこう思う”と、違う方向に動くのはいいんですよ。ただ、そこで受け入れないという態度を取ったり、口答えすると、もう言ってもらえなくなってしまいます。
まずは聞く態度を作って、人の言うことを受け入れて、それから自分で考えた結論に従って行動すればいい。上司の言う通りに動けということじゃないんです。せっかくなら言ってもらえた方が選択肢は広がるということで、それができる人が勝つと思います」

―契約が取れないと悩む若手にどのようなアドバイスをされていますか?

斉藤「“勝負は今月だけか?今年だけか?”と言いますね。
自分のことを振り返ると、売れている時期のことで、今、人に教えられることってあまりないんですよ。苦労していた時の方が、後で振り返るといろんなことを考えていたと思いますし、財産になっています。だから、“今の苦しい時期は、後から絶対財産になるぞ”と言っています。今のお前の数字はあてにしていないから、この苦しみや辛さから逃げないでいてくれればいいよ、と。それで、いつかこの経験を活かして、部下や後輩にアドバイスしてくれれば十分に元は取れるから、とアドバイスしています」

―斉藤さんご自身は不調の時期をどう乗り越えていましたか?

斉藤「売れなくなるのって、結局は天狗になっていたということなんですよね。お客様を選り好みして簡単に契約を取れそうなお客様を欲しがったりとか。
昔、テレフォンレディーっていう職種があったんです。電話でセールスして、物件を探している方を営業マンに紹介する仕事なんですけど、そこから契約に結びつくことはほとんどなかった。当時、私はトップセールスでしたから、テレフォンレディーから来た紹介はいらないと言っていたんです。そんなの他の営業マンに回してくれと。
そんな時期に、調子を崩して売れなくなった時期があったんですけど、当時の営業部長が私に見込み客ノートを持ってこいと言うんですよ。それで持って行ったら“お前にこんないい物を持たせていても契約は生まれない。今のお前の状態では、このノートに書いてある人がお客様だと思えないだろ”と言われて取り上げられてしまった。確かにその通りでした。
そのノートさえあれば契約こそできなくても、電話したりできるじゃないですか。でも取り上げられてしまったから、仕方なく電話帳を持ってきて飛び込みの電話セールスをするわけです。一からやり直しですよね。見込み客との電話だと大体がおざなりな話になるんですけど、初めて電話する方ですから、それこそ“今のお住まいに不満はありませんか?”というところから始めないといけません。それで、不満があるという方を訪問して、扱っている住宅のご説明をして、お客様が一度見てみたいとなったらご案内して、契約に至るという、シンプルな営業がまたできるようになったんです。
当時の営業部長が見込み客ノートを取り上げなかったら、私はずっとそれを使って楽な仕事をやって、契約を取れなかったでしょうね。私に対して本気で接してくれた上司だからやり直せたと思いますし、自分もそうありたいと思いますね」

―現在、斉藤さんは副社長という立場ですが、マネージャーの方にはどういった指導をされていますか?

斉藤「毎月、マネージャーを集めたミーティングがあるのですが、そこで指示しているのは部下に対する接し方です。
部下を育てようという態度ではなく、部下に育てられていることを自覚しろと話しています。よく、部下の面倒を見るのに1年かかりましたって言う上司がいますけど、部下は上司を3日で見抜くぞと。部下に対して本気で接して、みんなの話をきっちり聞いて、僕もみんなに育ててもらっているから、みんなで一緒にがんばっていこうという姿勢が大事なんだと言っていますね」

―営業マンに最も必要とされる資質はどんなことだとお考えですか?

斉藤「何度も繰り返しますが、やはり本気になれるかどうかだと思います。本気になれなかったら、何を言ってもそれは結局着飾った言葉であって、そんな態度ではお客様に申し訳ないですから」

―最後に、本書の読者となる全国の営業マンと営業マネージャーの方々それぞれにメッセージをいただければと思います。

斉藤「営業には重要なことが3つあると言われます。まずは“営業知識”、それをどう使うかという“営業技術”、最後に“営業態度”、この3つです。技術や知識っていうのはキャリアを積んだだけ上がっていくんですけど、それでも売れなくなる時期っていうのがある。うちの会社の営業部もそうで、入社して5年くらいまではすごく伸びるんですけど、そこから徐々に下がってしまう。それはなぜかというと、“営業態度”が崩れるからです。
この本は、その“営業態度”について書いています。20年、30年営業としてやっていくためにも“営業態度”を崩さずやっていきましょうということですね。
売れる営業マンも売れない営業マンも、言っていること自体は変わらないですよ。売れるか売れないかを分けるのはそこではなく“営業態度”なんです。こう言えば売れるなんていう魔法の言葉なんて無いんですから。
接客中に知識や技術を使う場面なんてわずかなものです。でも、態度は最初から最後までずっと使います。だから、そこを徹底してほしいですね。
マネージャーについては、とにかく一人でも部下を持ったら、その部下を自分の子供を育てるくらいの気持ちであたることです。部下は上司を簡単に見抜きます。“言ってることとやってることが違うな”とか、部下は上司のことを見抜いているけど、わからないふりをしてくれているんですよ。そこを勘違いするなといいたいですね」
(インタビュー・記事/山田洋介)

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