本を知る。本で知る。

「色」 花村萬月著

  赤、紫、灰、黒、白、青、緑、黄、茶―。9つの色をそれぞれ作品の表題にした連作短編集。田中角栄が逮捕された頃の新宿歌舞伎町(「赤」)、観光客でにぎわう京都・銀閣寺周辺(「紫」)、雪に降り込められた北国(「灰」)、沖縄の遊郭(「黒」)など、物語の舞台はさまざま。それぞれの色が象徴するものは物語の中で示されており、その絶妙な現れも作品の大きな魅力となっている。
 作者に英才教育を施し、自らも創作者たらんとした父親を描いた『黄』、母親との間に深刻なコンプレックスがあることをあえて認め、その生と死を描いた『茶』は、ごく私的な物語を描くことにより普遍的な「父性」と「母性」に迫ることになった問題作。『茶』のラストシーン、亡くなった母親の骨を「奥歯で丹念に噛み締め」る作者の姿に読み手が覚えるのは、戦慄、それとも慟哭(どうこく)?花村萬月が贈る「異色」物語、ぜひ「ご鑑賞」を。

書名:色
著者:花村萬月
発行:文芸春秋
定価:1785円

夕刊フジ

産業経済新聞社発行が発行する、首都圏・近畿圏を中心に販売されているタブロイド判夕刊紙。ターゲットは30代~60代を中心とした都市型男性ビジネスマン。 WEB版は「ZAKZAK」(http://www.zakzak.co.jp/)で、紙面と同じ記事だけでなく、WEBオリジナルの記事も人気。 書評は毎日掲載しており、紙面ではこのコラムで掲載されたもの以外も読むことができる。

記事一覧 公式サイト

夕刊フジの書評からの一覧

一覧をみる

書籍アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

漫画アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?