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「調律師」 熊谷達也著

  「邂逅(かいこう)の森」など、自然、そして東北に生きる人々を主にテーマとして描く著者が、「大人の寓話(ぐうわ)」とでもいうべき、別境地に挑んだ。元天才ピアニストの成瀬は、自らの過失による自動車事故で亡くした妻の死と引き換えに、彼女が持っていた、「聴覚」と「嗅覚」が対応するという不思議な「共感覚」を獲得する。よい音には、果物やお酒の香りが、悪い音には生ゴミのような臭いがするという特殊体質を生かし、妻の調律道具とともに調律師として生計を立てることを選んだ彼は、はじめてコンサートの調律に訪れた仙台で、東日本大震災に遭遇する。
 妻の死、そして彼の不思議な能力は、彼に何をもたらしていくのか。「この物語を書かないと前に進めなかった」と語る仙台在住の著者が、初めて自らが被災した大震災を描いた、不思議な余韻に満ちた喪失と再生の物語だ。

書名:調律師
著者:熊谷達也
発行:文芸春秋
定価:1838円

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