ミリオンセラー『悩む力』と長編小説『心』の著者・姜尚中が、夏目漱石が100年前に書き残した最大の問題作『こころ』の解読に挑みました。
登場人物“先生”の長大な遺書を収めた漱石の『こころ』は、なぜ多くの読者の感情を揺さぶってきたのでしょう――それは、この世に生きる者がみな、誰かに先立たれた存在だからではないでしょうか。
死は対話の途絶をもたらしますが、二度と話せない状況は、逆に死者との距離を縮めてもくれることもあります。「死にゆく人々は、みんな先生」という認識から見えてくるものとは何か?
本書には、なんと夏目漱石『こころ』とトーマス・マン『魔の山』の後日談を描いた実験的な小説も収録しました。心の実質を太くする生き方を提唱した、新しいスタイルの物語人生論の登場です。
ぜひともご注目下さい!
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この世に生きる者はみな、
誰かに先立たれた存在であるはずです。
父や母、恩師や親友、そして息子……。
彼らは、過去になってしまいました。
しかし、彼らは、ただ消滅したのではありません、生きている、
過去として生きている、
そして過去だけが確かに「存在」していると言えるのです。
こう思いながら、脳裏に浮かんだのは、
夏目漱石の『こころ』でした――。(「はじめに」より)
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【目次より】
序章 「心の力」をつけるとは
1 不安に怯えるつかの間の幸福感
2 物語人生論
3 ハンス・カストルプと「河出育郎」
4 二つのダヴォス
★『続・こゝろ』① 進駐軍
第一章 現代という武器なき戦場
1 なぜ「こころ」なのか
2 マンが描いた二十世紀ヨーロッパ
3 「魔の山」の住人たち
4 第三のアプレゲール
★『続・こゝろ』② 頬傷の男
第二章 なぜ生きづらいのか
1 オルタナティブがない
2 隣人がいない
3 やるべきことがわからない
4 時代と心
★『続・こゝろ』③ 秘密箱
第三章 「魔の山(イニシエーション)」の力
1 モラトリアムのすすめ
2 卒業証書をもらっても
3 「先生」探し
4 イニシエーションというもの
5 アンチ・グローバリズム
★『続・こゝろ』④ 洗礼盤
第四章 真ん中でいこう
1 偉大なる平凡
2 染まらないということ
3 人生の厄介息子
★『続・こゝろ』⑤ 山の上のホテル
第五章 「語りつぐ」ということ
1 デス・ノベル
2 死によって生が輝く
3 投げ出す力、受け取る力
4 消えない命のともしび
★『続・こゝろ』⑥ 万年筆
終章 いまこそ「心の力」
【著者プロフィール】
姜尚中(かん・さんじゅん)
1950年生まれ。東京大学名誉教授。2014年4月より聖学院大学学長に就任。専攻は政治学・政治思想史。著書に、100万部超のベストセラー『悩む力』と『続・悩む力』のほか、『マックス・ウェーバーと近代』『オリエンタリズムの彼方へ』『ナショナリズム』『日朝関係の克服』『在日』『姜尚中の政治学入門』など。小説作品に『母―オモニ―』『心』がある。
書名:心の力
著者:姜尚中
発売日:2014年1月17日
定価:756円(税込)