投資にはさまざまなものがある。そして、その対象は国内だけではない。海外に目を向ければ選択肢は大きく増える。
投資スクールを運営する町田健登氏が注目するのはフィリピンだ。
縁があって駐在員として現地に渡航。そこで不動産投資を始めた町田氏は、フィリピンの持っている力に魅せられた。ただ、その一方で落とし穴も存在する。そんなフィリピン不動産投資の実際をまとめたのが『フィリピン不動産投資術』(ビジネス教育出版社刊)だ。
今回は町田氏にフィリピンで不動産投資をする上でのポイントについてお話を聞いた。
(新刊JP編集部)
――町田さんはこれまで「フィリピン株」への投資をテーマにした書籍を執筆されてきましたが、今回のテーマは「不動産投資」となります。まずこのテーマ設定の経緯からお聞かせください。
町田:海外不動産投資には良い部分と悪い部分の両面があります。良い部分としては市況に振り回されにくいことですかね。特に今は戦争や中国での経済危機により株式市況が不安定ですが、そういう時でも不動産は、安定的に継続して家賃収入を得ることができます。
また、外貨を安定的に得る手段があることも大切です。前著『社畜会社員から資産1億つくった僕がフィリピンの株を推すこれだけの理由』を出版したのは約1年前ですが、そこから円安がかなり進みました。
円の価値は目減りしましたが、外貨を持っていれば、むしろ資産が増えている方もいます。円安により物価上昇が止まりませんが、外貨を持つことで資産保全をすることができます。安定的に外貨を得ようとするならば、海外の不動産は選択肢の一つになりえます。
――なるほど。では、悪い部分についてはいかがでしょうか。
町田:私はフィリピンが専門なのでその領域でお話をしますと、フィリピンの不動産価格もここ数年でだいぶ上がってきています。その点はお伝えしないといけないと思っています。さらにその上で、仲介業者がお金をあまり持っていない方に不動産を売り、せっかく不動産を買ったのに客付け管理などの具体的な提案もなく運用できていないという相談を以前からいただいていました。
今回、「フィリピン不動産投資」というテーマにしたのは、そういった背景もあって、不動産投資にチャレンジしようとしている方々に向けて、今のフィリピン不動産の実態について伝えたいという思いがあったんです。
――そもそも海外への不動産投資について馴染みがない方も多くいると思います。まずは情報の収集や知識の獲得が大切だと思いますが、その点で気を付けるべきポイントを教えてください。
町田:不動産投資で一番気を付けないといけないのが「立地」です。良い立地の不動産を安く買うかが勝負で、それができなければ正直負債を購入するのと同じ意味になってしまいます。そのために必要なのが情報収集なんですよね。
また、平米単価、日本で言うと坪単価ですが、これを調べずに買うのはNGです。まずは自分が良いと思っている物件が平米でいくらかを知り、その周辺の物件の単価もインターネットなどで必ず調べます。
次に大事なのが、本当に利回りか高いかどうかです。安く仕入れられたとしても、最低でも良いケースと悪いケースの2軸で判断しないといけないと思います。業者は(物件を)売りたいのでオーバートークをしてくることがあります。それを信じるかどうかの判断をするための情報、例えば周辺のホテルはいくらだとか、周辺で20平米くらいの部屋はいくらで借りられているとか、そういうことは自分で調べないとカモにされてしまいかねません。
――立地という点ではやはり現地を見たほうが有利になりますか?
町田:それはそうだと思います。理想としては、現地を訪れたほうが良いでしょうね。フィリピンでも、大通りから1本通りを外れただけでスラムにように治安が悪くなったり、渋滞が思っている以上に激しくて、交通の便が意外と悪いみたいなことがよくあります。
また、近い将来地下鉄の駅ができるといった情報が得られることもありますし、治安の良し悪しを肌で感じることもできます。ただ、なかなか現地に行くのが難しいということであれば、本当に信頼できる仲間や業者に頼るだけでなく、現地に住んでいる人とつながれるといいですね。
――本書の中で、海外不動産のチェックポイントとして「人口」「経済レベル」「物価価格上昇」「期待利回り」「為替の変動」の5つをあげていますが、この中で特に重要なものは何ですか?
町田:これは難しい質問ですね。すべて重要というのが回答です。ただ、見落としがちという点でいうと「為替」でしょうか。海外の不動産投資をしていたら、人口ですとか、一人当たりのGDP、期待利回りは私が言うまでもなく調べていると思うんです。ただ、為替の変動を考慮するという点は忘れられやすいのかなと。
――これは海外投資ならではの特徴ですね。
町田:そうなんですよね。私はフィリピン以外の国にも不動産を持っていて、例えばエジプトなんかはフィリピンの国の状態とすごく似ていて、(価格が)上がるだろうと思って不動産を3つ購入したんです。
そして実際、ここ2、3年で物件価格は上昇しているし、一見得をしたように見えるのですが、通貨であるエジプトポンドが約35%下落してしまって、不動産価格は上がったものの結果はトントンくらいになってしまったんです。
だから、日本円に対してどれだけボラティリティがあるのかを見ないといけません。どれだけ家賃が入ろうが、価格が上がろうが、日本円に対して負け続けていたら、値引いて考える必要があります。
――海外不動産投資に向いている人についてお伺いしたいのですが、やはりある程度キャッシュを持っていることは必須でしょうか。
町田:そうですね。最低でも1000万円、あわよくば2000万円、3000万円くらいは。そのくらいは最低限ないと手を出したらいけないというのが明確な回答です。
また、向いていない人についてお話をすると、私自身で不動産の管理をやってみて思ったことがあって、ドキュメンテーションがかなり遅くて雑なんです。不動産の契約書類が遅れたり、平気で名前を間違えたり、誤字脱字も激しい。そういう部分も大らかに対応できないとかなりストレスがたまると思います。
――まさに文化の違いという点ですね。
町田:文化の違いですね。逆にその部分さえクリアすることができれば、フィリピンペソはとても安定している通貨ですし、毎月安定的に収入があり、日本からも比較的に近いという利点がフィリピン不動産投資にはあります。まだまだ成長していきますし、良い投資なのではないかと思いますね。
(後編に続く)
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