生活に占める時間的比重の点でも、人生に充実感を得るための要素としても「仕事」は大きな存在だ。仕事が楽しく、やりがいがあるものであれば、それだけで人生にけっこう満足してしまったりするし、逆に仕事に苦痛しか感じられないと、毎日がつまらないものになりやすい。
だから、仕事の時間をいかに充実したものにするかは多くの人にとっての課題なのだが、これがなかなか難しい。あなたは、「今の仕事はやりがいがある」と断言できるだろうか?
『最高に「生きがい」のある仕事』(幻冬舎刊)の著者・石田行司さんも、かつては仕事につらさを感じていた一人だった。そんな石田さんはなぜ、「仕事は生きがい」と言うまでになったのか。「人生の中での仕事の位置づけ」に悩むすべての人にお届けするインタビュー後編だ。
――石田さんの場合は、仕事の方向性と娘さんのことを含めた人生の方向性が一致したことで、仕事が「生き甲斐」と呼べるものになりました。ただ、ほとんどの人はそうはなりません。仕事のベクトルと人生のベクトルが揃わずにいる方にアドバイスをいただきたいです。
石田:自分の人生を通じた夢と、仕事のベクトルを合わせるためにどうするか、ということですよね。よく若い方にそういうことを質問されるのですが、「夢は探すものではなくて、決めるものだよ」と答えています。
「こんな風になりたい」というものでもいいですし「お金持ちになりたい」というものでもいい。夢といっても、そんなに壮大なものである必要はないのですから、自分がやりたいことや興味のあることについて一度しっかり考えてみて、そしてひとまず「これをやろう」と決めてみる。そうすると、そこまで到達するために何が必要なのか見えますから、今やるべきこともわかるのではないでしょうか。
――MR時代は必ずしも仕事にやりがいを感じていたわけではなかったというお話がありました。当時嫌だったことはどんなことだったんですか?
石田:端的にいえば数字です。MRは営業なので、ノルマもありましたし。自分で言うのもなんですが、成績はよかったんです。だけど、その数字を作るためにあちこち走り回ったりというところで、辛いこともありましたね。
自社の薬を買ってもらうためにお医者さんのところに行くんですけど、やっぱり中には嫌な医者もいるんです。ひどい人なんて名刺を渡したら、そのままそれをゴミ箱に捨てますからね(笑)。
――数字に追われて仕事をするのって辛いじゃないですか。それをどのようにやりがいや楽しさに変えていかれたんですか?
石田:目の前の医師ではなくて、医師の向こうにいる患者さんに貢献できているんだと考えるようにしたことです。医師に薬を売るのではなくて、患者さんにきちんと薬が届くようにするために、こちらが医師を教育しないといけないということを考えるようになったら変わっていきましたね。
――視野が広がった感じですね。
石田:そうですね。もっといえば、開業医ってみんな自分の病院を繁盛させたいんですよ。そのためにはやはり患者さんを治すことですよね。その気持ちを汲み取って、自社の薬だけでなく他社の薬も勉強して、どの薬がどんな患者さんに合う、ということをアドバイスするようにしていましたし、「自分が病院長だったらどうするか」という視点で営業をしていました。そうなると、もう「ただ薬を売るだけ」という仕事とはやりがいが全然違います。病院側も自分を必要としてくれるようになる。どんどん仕事が楽しくなっていきましたし、当然成績もついてきました。
――石田さんが経営されているニューロンネットワーク株式会社では社員が仕事にやりがいを感じられるようにどのような取り組みをされていますか?
石田:私は死ぬ時に、それまで出会った人みんなに「あなたに会えてよかった」と言ってもらいたいというお話をしましたが、それを入社した従業員みんなにやってもらって、どんな人生を送りたいかを考えてもらいます。
そのうえで、うちの会社の仕事が彼らの人生と少しでもリンクするように、やりたいことにチャレンジできる制度を充実させています。いずれ独立したい人もいるでしょうし、会社の中で出世してマネジメントする立場になりたい人もいるはずです。もちろん今のままでいいという人もいるでしょう。それぞれに思惑があっていいので、それを何年かの計画にしてチャレンジしていきなさいと言っています。今のままでいいといっても、現状維持をするには少しずつ上がっていかなければいけないので、そこにも何かの挑戦をする余地はあるんです。
――最後に、仕事が面白くない、やりがいがないという人に向けて現状を変えるためのアドバイスをお願いします。
石田:「おもしろくなき世の中をおもしろく」と過去の偉人が言っていましたけども、どうせ働くなら、少しでも楽しくなる方向に考えていった方がいい。今回の本はそのためのお役に立てるのではないかと思います。少しでも参考になるところがあればうれしいですね。
(新刊JP編集部)
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