道端や空き地、公園など、あらゆる場所に生えている雑草。踏まれたり、刈られたり、予測不能な激しい変化が起こる場所に生えている雑草は、実は特殊な環境に適応して、特殊な進化を遂げた特殊な植物なのだ。
私たちが生きる社会も、現在起きている新型コロナウイルスの流行が明らかにしたように、ある日突然仕事がなくなり収入が途絶えたり、これまで普通に手に入っていた物品が売り場から消えたりと、予測不能で不確実だ。変化に富んだ人生に対応していくために、見習うべきなのは雑草の生き抜く強さ、しぶとさなのかもしれない。
『「雑草」という戦略 予測不能な時代をどう生き抜くか』(稲垣栄洋著、日本実業出版社刊)では、静岡大学教授・農学博士の稲垣栄洋氏が、雑草の生存戦略について、ランチェスター戦略、ブルーオーシャン戦略、ドミナント戦略などのビジネス戦略と絡めながら解説する。
どこにでも生えている雑草は、強くたくましいイメージがあるが、実は競争に弱く、「弱い植物」と言われている。なので、競争力の求められない予測不能な変化の起こる場所を選び、その中で自分の得意な環境や場所に生えているという。
雑草にとって「踏まれること」は逆境だ。この逆境を利用しているのが、大きな葉が特徴のオオバコである。オオバコの葉は、柔らかい葉の中に丈夫な筋がしっかりと通っているため、踏みにじられてもなかなかちぎれない。茎は外側が硬くなかなか切れないが、中はスポンジ状になっていて、よくしなる。固さと柔らかさを併せ持っているから、踏まれることに対する強さがあるのだ。
さらに、オオバコは踏まれることに強いだけではなく、踏まれることをうまく利用している。オオバコは道端やグラウンドなど、よく踏まれる場所に生えているが、実はこれには理由がある。
オオバコの種子は、ゼリー状の物質を持っていて、雨に濡れると膨張してネバネバする性質がある。その粘着物質で人間の靴や自動車のタイヤにくっついて運ばれ、分布を広げていくのである。
オオバコは植物にとって逆境となる踏まれることを利用して、種子を散布することで、逆境をプラスに変えて成功している。踏まれることに適応した進化を遂げ、「踏まれる場所」で有意な地位を築いているのだ。
踏まれるところで生えるオオバコは、踏まれることにより、他の雑草との競争に勝っていく。逆境を自らの特徴でチャンスに変える戦略は、人間の社会でも見習うべきことだろう。過酷な環境の中で、どのような戦略で雑草を生き残っているのか。参考にしてみてはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)
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