雨の日、とくに梅雨の時期に住宅の塀やアジサイの葉の上などでよく見かけるカタツムリ。カタツムリとナメクジを合わせて「陸貝」と呼ぶが、日本産の陸貝は実に約800種も存在するらしい。
そんな陸貝を紹介するのが『カタツムリ・ナメクジの愛し方 日本の陸貝図鑑』(脇司著、ベレ出版刊)である。著者であり、寄生虫学者の脇司氏は、600種以上におよぶ陸貝の殻コレクションを持つ陸貝コレクターでもある。カタツムリはともかくナメクジは「ちょっと愛せそうにない・・・」という人が多いかもしれないが、海にいる貝と陸の貝はどうちがうのか?
陸貝とは、海にいる貝の仲間が陸上に進出したもの。陸貝の体のつくりはサザエやアワビに似ていて、這うための平たい足や触覚がある。ただし、陸上生活で不要なエラをなくし、代わりに空気呼吸のできる肺を持っているのが海の貝との違いだ。この陸貝だが、どんな生活をしているのだろうか?
陸貝は、葉っぱやキノコなどを主に食べている。また、ミミズの死体を食べることもあり、雑食と考えられている。
ただ、小さな体なので天敵も多く、陸貝はさまざまな生物に捕食される。文献では、アライグマ、ドブネズミなどの哺乳類、オオバンなどの鳥類がよく貝類を食べていることが報告されている。さらに、ヒメボタルの幼虫やマイマイカブリといった昆虫にも食べられるし、イワサキセダカヘビなどは、カタツムリを専食するヘビと知られている。
いろいろな動物の餌になっている陸貝だが、食べられないための抵抗もしている。樹上性のアオミオカタニシの殻は緑色で、外敵から身を守るためのカモフラージュしている。同じく、樹上性のサッポロマイマイは、マイマイカブリやキツネのような地上を歩くタイプの捕食者を避けるために木の上で生活していると考えられている。
また、ユニークなのが、攻撃する陸貝もいる点だ。エゾマイマイは、肉食の昆虫に遭遇すると、殻を大きく振り回して相手を攻撃するし、ナメクジ類の多くは、大量の粘液を出して抵抗する。この粘液は、陸海が普段分泌してるさらさらなものではなく、乾きかけの合成糊のような硬くてねばねばしたもの。このように、天敵から身を守る術も持っているのだ。
本書では脇氏が好きな種類、思い出深い種類のカタツムリとナメクジ115種の写真を掲載。実は身近にいるカタツムリやナメクジ。見過ごしがちだが、陸貝の可愛さに魅了された脇氏の解説を読むと、気になる存在に変わるはず。見かけた際は、観察してみてはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)
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