時差出勤やリモートワーク。
これまで日本で一部導入はされてきたものの、なかなか普及してこなかった柔軟な働き方が、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに広まりつつある。
ただ、働き方が変われば新しい問題が出てくる。たとえば、リモートワークにおけるコミュニケーション。大事なことは遠隔会議で決めればいいが、これまで職場で、口頭でしてきた確認やちょっとした疑問・質問の類は、メールやチャットツールで代替することになる。
テキストでのコミュニケーション能力の重要性は高まっているといっていいだろう。
人によってはこの「テキストコミュニケーション」や「文章力」が難問だったりする。口頭ではスムーズにやりとりができるのに、文章でやるとなると急に自信がなくなるという人もいる。
相手の顔が見えないため、忙しいかどうか、相談していいタイミングかどうかには気遣いが必要だ。時間をとらせないためにも、できる限り要点を簡潔に、わかりやすく、短く伝える必要がある。でも、これって結構、難しいことなんじゃないだろうか? もし自分の書く文章が煩雑で、わかりにくいものだったとしたら、どこから、どのように変えていけばいいのか?
『言葉を減らせば文章は分かりやすくなる』(山口謡司著、ワニブックス刊)によると、まずは削りやすいところから削って、「文字数」ベースで短くしてみるという手がある。
わかりやすいところでは、「〇〇の方」「〇〇かどうか」「〇〇のような」に注目してみるといい。これらは、削ってしまっても文章のメッセージは変わらないことが多い。
「販売促進で広告を出すかどうか悩んでいます」→「販売促進で広告を出すか悩んでいます」
「成果を阻害するような要因には、目を背けたくなります」→「成果を阻害する要因には、目を背けたくなります」
これらはあくまで「例」である。大事なことは、なくても伝わるような言い回しや言葉遣いは私たちが思っているよりもたくさんあり、しかも無意識に使ってしまっているということだ。
これは、「形容詞」についてもいえる。試しに、自分の書いた文面から形容詞を取り払ってみよう。少々味気なくなるかもしれないが、メッセージ自体に支障が出るほどではないことがわかるはずだ。
こういう「無駄文字」「無駄表現」に意識的になることが、簡潔でわかりやすい文章を書く第一歩になる。
また、傾向として物事をはっきり言わなかったり、要点をぼかすことで、相手の配慮をやんわりと求める文章は長く、煩雑になる。
「皆まで言わせるな。察してくれ」という気持ちでメールやメッセージを送る場面は、ビジネスの場面では少なくない。そのことの良し悪しはこの記事の本筋から外れるため判断しないが、少なくとも「察してくれ」と思って書いた文章は、歯切れが悪く、わかりにくくなるのは間違いない。だから、できるならばそういう文章はやめて、簡潔に書くべきだ。
「明後日の納品になると、発売予定日に間に合わない可能性があります」
「発売日をずらさないため、明日までに納品をお願いします」
この2つは、メッセージとしては同じだ。ならば、後者の言い回しの方がはっきりしていていいのではないか。
◇
簡単そうで難しいテキストでのメッセージ。
ここでは、今すぐ改善できることに絞って紹介したが、本書ではこういう即効性のある改善ポイントだけでなく、多少時間はかかり訓練が必要だけれども、より本質的に自分の文章をわかりやすくする方法にも踏み込んで解説している。
今、改めて重要度が増している「伝わりやすいテキストを書く技術」。
「この人のメール、何言っているかわからないんだよな」と同僚や取引先に思われないためにも、勉強してみてはいかがだろう。
(新刊JP編集部・山田洋介)
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