ささいなことで落ち込んだり、物事のネガティブな側面ばかりが気になってしまったり、あるいは他者からの批判に過度に攻撃的に反応してしまったり...。
こういったことは、その人の自己肯定感と密接に関係している。
日常の様々な出来事に心が動き、敏感に何かを感じとることができるのはいいことでもある。しかし、あまりにも感じやすかったり、それによって落ち込んだり、怒りに捉われる時間があまりに多いと、人生で幸福感や充実感を感じることが難しくなってしまう。自己肯定感は、とかく他者の感情に引きずられがちな人間関係のなかで、自分を保つ「錨」になるものだ。
この自己肯定感とはどのようなもので、どうすれば高めることができるのか。 今回は『フェアシンキング (自己肯定感が高まる最強の思考法)』(マキノ出版刊)の著者で、日米両国で心理セラピストとして活動する王丸典子さんにお話をうかがった。その後編をお届けする。
――自己肯定感の低い人の特徴についてお話をうかがいたいです。
王丸:他人の評価を基準にして自分を判断してしまうというのが大きな特徴です。たとえば、誰かに自分が着ていた服を「そのブラウス、似合わないんじゃない?」と言われただけですごく怒ってしまったり、自分全体が否定されたように感じてしまうとか、あるいは他人から評価されたり賞賛が受けられないと落ち込んでしまう、といったことです。
自己肯定感を持てている人であれば、評価の軸が自分ですから、着ている服が似合わないと言われても「そう?私はこのブラウス好きなんだけどね」と返せるのですが、自己肯定感が低いとなかなかそうは言えないんです。
あとは家庭環境のところで、親が過干渉だったり、いいところをほめるよりもマイナスポイントを指摘するタイプだったりすると、自己肯定感は育ちにくい傾向がありますね。もちろん、親がそういうタイプでもあまり気にせずに育ったたくましい人もいるのですが、繊細な人だと自分で自分を認められず、内心ですごく傷つきながら育ってしまうことがあります。
――自己肯定感が低く、何事にも自信を持てない人が職場にいたら、同僚としてどう接していけばいいのでしょうか。
王丸:根本的には本人の問題なので、どこまでやるかという問題がありますよね。周りの人に何ができるかというと、じっくり話を聞いてあげるくらいしかないのではないかと思います。
ただ、その時にはぜひ「アクティブ・リスニング」をしてみてください。相手の話をしっかりと聞く姿勢を持って、相手が「Aだと思っている」と話していたら「あなたはAだと思っているんだね」と共感してあげる。そうすることで、相手は「この人は自分のことを理解してくれた」と考えます。これだけでも相手は「自分の言っていることは、他の人の理解を得られる価値のあることなんだ」と感じられて、気持ちの面で少し上向くんです。
――自己肯定感の低さや、それに由来する日常生活の問題を解決するために、本書では「フェアシンキング」という考え方が示されています。これはどういう考え方なのでしょうか。
王丸:「フェアシンキング」とは私が作った言葉で、欧米の心理学のフィールドで一番使われている療法(認知行動療法CBT)を簡素化したセルフエクササイズを指します。
私たちは誰しもが、自分の中の固定観念を通して物事を見ていて、たとえば乗らなければいけない電車に乗り遅れてしまった時、人によってはこの世の終わりのように感じて落ち込んだり、逆に「次の電車でいいか」とさして気にしなかったりします。
同じ出来事に遭遇しても、人によって解釈が違うわけで、その違いをもたらしているのが固定観念で、後者の「次の電車でいいか」と思える人の方がストレス耐性は高いと言えます。
自己肯定感が低い人ほど、同じ出来事を見てもネガティブな方向に考えやすいので、それを少しずつ「次の電車でいいか」という方向に考えられるように、もっといえば自分の気持ちが安定して、自分のことを自分で引っぱり上げられるように、物事の見方を変えていきましょう、というエクササイズですね。
――それは自分でできることなのでしょうか。
王丸:できます。新しい考え方や物事の捉え方を習得するのは、運動や楽器の演奏を習得するのとまったく同じで、反復によって身についていきます。
――本書をどんな人に読んでほしいとお考えですか?
王丸:「ビジネスエリートが実践」と書いてはいるのですが、ビジネスエリートじゃなくても、悩みや不安を抱えるすべての方々に読んでいただきたいと思っていますし、自己肯定感が低い方でなくても、落ち込んだ時や不安な時に手に取って、エクササイズを実践していただくと、気持ちが安定すると思います。
――最後に、この本を読んでほしい人にメッセージをお願いできればと思います。
王丸:今世の中がこういう状況で、不安がない人はほとんどいないはずです。仕事が減ったり、なくなったりした人ももちろんそうですし、富裕層の方だって不安がないわけではないでしょう。
今回の本で書いているフェアシンキングは「自分の心をあやすツール」だと思っています。心が揺れて不安な状態はつらいものですが、うまく自分をあやしながら日々を過ごすことで、大変な事態でも乗り切っていくことができるはずです。この本がそのための助けになることを心から願っています。
(新刊JP編集部)
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