企業にとって、データの活用は売り上げを左右する死活問題だ。
ただ、その一方でなんとなく数字やグラフを見て、深く考察せずに小手先で判断してしまっている企業も少なくないだろう。
数年前に「ビッグデータ」という言葉が流行し、「うちもデータを活用していこう」と息巻いた企業も多いはずだが、データ分析の専門家として数多くの経営課題を解決してきた柏木吉基氏によれば「『我が社の従業員はデータを有効に活用して成果を出している』という話を耳にしたかと言えば、ほとんどない」と指摘する。
各社がデータ活用に乗り出す中で、なぜ有効的に活用できていないのか、そしてなぜ成果を出せないのか。柏木氏は次のように解説する。
データ活用の必要性を感じてはいるが、実践できていない人には共通点があるという。
その一つは、「目の前のデータを見てみることから始める」ということ。並んでいる数字をまずは漠然と見つめ、グラフを作ってみて、そこから考えるというフローを辿っている人だ。
しかし、柏木氏によると、この行為がそもそもまちがっているという。
「目の前のデータを適切にいじると、何か有用なものが見えてくるはず。何も見えてこないのは、分析方法や知識が欠如しているからだ」(『問題解決ができる! 武器としてのデータ活用術』p.23より)という「データや作業がまず先に有りき」という思い込みをすぐに捨てなければ、有効的なデータ活用はできないのだ。
データ活用には基本的に3つのフローがある。
(1)分析前の問題・目的定義と仮説構築=考えて
(2)分析そのもののスキルや知識=作業して
(3)分析結果の解釈とストーリー構築=考える
「とりあえず目の前のデータをながめてみる」「グラフをつくってみる」という行動は、この3つの段階のうち、(1)と(3)が抜け落ちて(2)だけになってしまっている。しかし、(1)(3)の必要性を認識し、実践できていなければ、データを活用することはできない。
「考えて、作業して、考える」という一連の流れにおいて、最も重要なのは、まぎれもなく最初の「目的定義・仮説構築」だろう。
データは一つのインフラやツールとして活用するものである。自分が解決したいことがまずは存在し、その上で自分の今の考えが本当に正しいかどうかを照らし合わせていくときに大きな効果を発揮する。そして、その結果をアウトプットに活用してこそ、データ活用の意味があるのだ。
データ活用によるアウトプットの形は、数字が羅列された表から生成されたグラフではない。
そこを分かっていなければ、データを活用しているとは言えないのだ。
柏木氏の著書『問題解決ができる! 武器としてのデータ活用術』(翔泳社刊)は、サブタイトルに「高校生・大学生・ビジネスパーソンのためのサバイバルスキル」とあるように、高校生からデータ活用の基礎を学べる一冊の手法だ。
これからの時代に価値ある成果を出し、生き残っていくための武器を身につける立場にある人や、それを教えている方々には、「方法論や知識」と「その活用法」のどちらが必要なのか、をまずは確認頂くことが重要だと思います。(p.25より)
と柏木氏がつづっているように、本書を読むとデータ活用において何が大切なのかが深く理解できるだろう。もちろん、方法論や知識があって越したことはないし、それらを身につけることで、できることの幅が広がることも事実だ。
しかし、多くの人は「活用できていない」という現状を抱えている。
これからの社会において、よりデータサイエンスの重要性は増すだろう。だからこそ、できるだけ早い段階から本書の内容を身につけておきたいところだ。
(新刊JP編集部)
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