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エース社員を育てるために上司がすべきこととは?

  • 書名 マンガでわかる 伝説の新人 20代でチャンスをつかみ突き抜ける人はここが違う!
  • 監修・編集・著者名紫垣樹郎、秋内常良、三輪亮介
  • 出版社名集英社

6月に突入し、4月に会社に入ったばかりのフレッシュマンたちにとって、これからが仕事の本番といったところだろう。
しかし、実は今の時期の過ごし方がその後、自分がビジネスの世界で大きく羽ばたけるかどうかの分岐点になるということを、どれだけの新人が知っているだろうか。

各社のエース級のビジネスパーソンたちのインタビューを行い、彼らがどんな新人を過ごしてきたかを分析してきたクリエイティブコンサルタントの紫垣樹郎氏は、『マンガでわかる 伝説の新人』(集英社刊)にその特徴を分かりやすくまとめている。

「主体性を持ってビジネスを楽しむ者が、大きく羽ばたく」――そんなメッセージが込められた紫垣氏へのインタビュー。突き抜けたビジネスパーソンへの道は、どのように辿ればいいのか?
今回はその後編をお送りする。

前編はこちらから

(新刊JP編集部)

■上司の立場から見たときの「伝説の新人」の育成方法

――この『マンガでわかる 伝説の新人』は、育成する立場の上司も参考になる一冊だと思います。「この新人は将来エース級になれる」と見込める素材が出てきたとき、どのように接することが大切ですか?

紫垣:最近のキーワードですが、心理的安全性、セキュアベースを大切にすべきでしょうね。ちゃんと見てくれている人がいる環境だからこそ、思い切ったチャレンジができるものです。だから上司が「お前のことをちゃんと見ているよ」と伝えて、安心感を与えることが大事です。

ただ、それは甘やかすとは別です。心理的安全性をしっかり作り出すコミュニケーションを取りながら、自らチャレンジしたくなるような主体性を育てていく。それが上司には求められます。

――仕事を新人に振るときは、どのレベルの仕事を振ることを心がけるべきなのでしょうか。

紫垣:その新人がジャンプしてギリギリ届くくらいのレベルですね。全く届かない仕事を任すのは、失敗して諦めを覚えさせてしまうだけなのでNGです。

一方で簡単な仕事を与えても退屈なだけですから、CSバランス、チャレンジ(C)とスキル(S)のバランスを取っていくことが大切です。

――仕事に対して「当事者意識」を持ってもらうことは極めて重要だと思うのですが、そのための手段などありましたら教えてください。

紫垣:最近、人から聞いて共感したのですが、「部下からの愚問に答えてはいけない」ということなのだろうと思います。

その愚問とは「これはどうすればいいですか?」という、自分の考えを放棄して答えを教えてもらうだけの質問ですね。私が在籍したリクルートでは、そういう質問をされたときに返答の仕方が絶妙で、「お前はどうしたいんだ?」と上司が必ず聞くんですよ。そうやって、自分で考えさせて仕事を進めていく。それが積み重なっていくと、主体性が生まれるわけです。

だから「どうすればいいんですか?」という愚問には答えない。そこは意識すべきことだと思いますね。

――では、新人側の「こうしたいです!」という答えについては、基本的にはそれで進めさせるべきなのでしょうか?

紫垣:仮に的外れなことを言っていたら会話をすることも大切です。そこは指摘しないといけない。でも、メンバー一人一人が意見を発する機会をつくること自体が、新人にとって大きな学びになると思います、

■AI時代でも変わらず結果を出せる人材とは?

――本書に書かれている「新人時代は失敗が許されている唯一の期間である」という強みは、新人の皆さんにぜひ覚えておいてほしいなと思います。

紫垣:そうなんですよね。当然、新人の方々は気づいていないけれど、極端な話、上司は「これが失敗したら会社が傾く」というような仕事は任せません。言うなれば、新人に対して期待はしているけれど、期待値はそんなに高くない。それが新人ですから、その状況を俯瞰して、恵まれた環境の中でチャレンジをしないのはもったいないですよね。

――また、自分のお手本となるような存在がいると行動しやすくなるのではないかと思うのですが、そういう人はどう探せばいいのでしょうか?

紫垣:そういう存在となる人が近くにいればいいんですけどね。私の場合、尊敬できる先輩がたくさんいましたが、この部分はあの人がすごい、あの部分はこの人がすごいという感じで、「何から何までこの人にようになりたい!」という存在はいませんでした。

でも、それでも良いんです。自分の足りないところ、伸ばすところを謙虚に見つめて、その部分に長けている先輩をリスペクトして学ぶ。そういう風にいろんな人から学ぶというのも一つの手だと思いますよ。

――『マンガでわかる 伝説の新人』では主人公である美由希の叔父がメンター役として登場します。メンターはいたほうがいいですよね?

紫垣:いないよりはいたほうがいいですが、美由希の叔父ほど完璧な人もいないでしょう(笑)。これはマンガで分かりやすく伝えるための一つの方法として、叔父の存在をメンターに据えました。

ただ、学びを吸収することはメンターがいなくてもできます。そのもっとも簡単な方法が本を読むことですね。さまざまな世界を吸収できるし、その人の考え方がまとまって書かれているのでインプットもしやすい。自分の興味が向いている方にいる先駆者の考えにのめりこんでいけます。

どんな職業・仕事においても第一線で活躍している人たちの言葉は学びになります。それこそ、私たちはイチローさんのインタビューを聞いて学びにしているわけですよね。そういう意味で、様々な人の書いた本を読むというのはいいことだと思いますね。

――今後、まさにAI時代を迎える中で、そのAI社会の中心にいるのが今の新人と呼ばれる世代の人たちだと思います。時代が変わってもビジネスで結果を出せる人はどんな人だとお考えですか?

紫垣:ビジネスを楽しんでいる人。自分なりに考えて「こうしたらいい」とか「こういう風にしよう」と考えてそのために動き続けていける人ですね。そういう人は、常にビジネスを楽しみ続けられるという強みを持てます。

――では最後に、これから本格的に仕事がスタートする新人たちに新社会人にメッセージをお願いします。

紫垣:これから長く仕事を続けていくわけですから、断然楽しんだ方がいいです。そのコツは、やらされるのではなく、主体的な意識を持って仕事をすること。自分なりに工夫したりして、小さいことでいいから結果を出せるようになるといいですね。

また、その仕事の目的、期待値がどのくらいなのかを絶対に外さないこと。相手の求める期待値を1%でも超えようと意識すると、相手から喜ばれて次のチャンスをもらうことができる可能性が高くなります。

おそらく、仕事には「楽しい仕事」と「楽しくない仕事」があるのではなく、「その仕事を楽しくする自分」と「仕事を楽しまない自分」がいるだけなのだと思います。ならば、自分で仕事を楽しくしていくように心がけてほしいですね。

(了)

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