映画やテレビドラマ、CMで活躍した女優の樹木希林さんが、2018年9月15日に亡くなってから5ヵ月。
味のある演技とともに、インタビューなどの語り口からうかがいしれる独特の人生観が多くの人を惹きつけてきた樹木さんは、確固たる「自分の言葉」を持った人でもあった。その数々の言葉を写真と共にまとめたのが『樹木希林 120の遺言』(樹木希林著、宝島社刊)である。本書では、樹木希林さんが貫いた生き方のエッセンスを読むことができる。
■家族には無関心くらいがちょうどいい
樹木さん家族についてはよく知られている。夫はミュージシャンの内田裕也さん。そして、一人娘の也哉子さん。也哉子さんの夫は俳優の本木雅弘さんだ。樹木さんは家族に対して、どのような想いや考え方を持っていたのだろうか。
樹木さんは、家族に対しては孫に至るまで仲良くというよりは無関心でいることにしていた。孫だと思ったり、婿さんだと思ったり、稼ぎ頭だと思ったりすると、何かあったときに「大丈夫かな」と思ってしまう。他人だと思うことで、そういうことを考えないようにしないようにしていたそうだ。期待をしなければイライラすることもないのだ。
期待というのは、自分側から見た「こうであってほしい」という気持ちの表れだ。向こう側から見たものは違う。人はそれぞれであり、それぞれに異なるみんなが自立して一つの家族を作っている。これは大前提としてあるべきだが、つい忘れてしまいがちだ。
■赤ん坊でも子どもでも「人」として付き合う
子育てについても本書では綴られている。赤ん坊だとか、子供だとかというふうに考えず、人として付き合うというのが樹木さんの信念だった。だからこそ、子供に対しても残酷にものを言うこともあったという。
傷つかずに育ってしまうと、社会に出て挫折してしまうかもしれない。なので、樹木さんのところで傷ついてもいいかなと考えているのだ。
也哉子さんを育てるとき、一人っ子だったので、ケーキがあったときに樹木さんが一番最初にとるようにしていたという。わざと「何ちゃん、食べなさい」ということはしなかった。社会に出たとき、「あんたが最初にどうぞ」というふうにはいかないからだ。
■老いは「絶対に面白いこと」
老いについての言葉にも触れておこう。歳をとることが嫌だと感じる人も多いかもしれないが、老いることについて、樹木さんは「絶対に面白いことなの」と綴っている。
若いときには「当たり前」だったことができなくなっても、不幸だとは思わない。そのことを面白がる。老いは当たり前に来るものなので、ブレーキをかけずに、やってきたように死んでいく。
仕事の管理も一人でやっているので、一人でできなくなったらおしまい、と考えていた樹木さん。「最後のセリフは『今世は、これにてご無礼したします』。いいセリフでしょ」と綴っているところからは、樹木さんの死生観が感じられる。
女優として、女性として、母として、人として、自然体に生きて人生を面白がる。樹木さんの成熟した人間性はかっこいい。数々の言葉から生きる力をもらえるはずだ。
(新刊JP編集部)
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