人生の時間の中で大きな比重を占めるのが仕事。
それだけに、自分の仕事に満足できるか、少なくとも「まあいいか」と思えるかどうかは、人生の充実度に関わってくる。では、会社や仕事への満足度を決めるものは何なのか?
一つは給料であるのは間違いない。しかし、すべての会社が従業員に高給を与えられるわけではないということも事実。だからこそ、企業側は従業員に満足感とモチベーションを持って働いてもらうために、給料以外の要素を作る工夫が必要になる。
■待遇を改善しても従業員のモチベーションは続かない
ところで、給料さえ充実させれば従業員が満足するかというと、そうとも言えないようである。
『もう、転職はさせない! 一生働きたい職場のつくり方』(前川孝雄、田岡英明著、実業之日本社刊)では、給料を含めた待遇面をつり上げることで従業員のモチベーションを高めようとした「ワイキューブ」の例を挙げている。
「ワイキューブ」は2000年代に「就職したい企業ランキング」で上位にあがっていたこともあるベンチャー企業だが、待遇改善の取り組みは完全な空振りに終わった。
給料の大盤振る舞いや豪華なオフィス、社内設置されたカフェやバーなど、従業員が喜びそうな待遇改善の試みを続けた同社だったが、それらによって従業員のモチベーションが上がったのはせいぜい一年ほどだったという。ちなみにワイキューブはリーマンショックの影響もあり、2011年に倒産している。
また、給料など待遇面をアピールして採用した人材は、もっといい条件の会社があればそちらに転職してしまう。カネで釣った人材はカネで辞めてしまうのだ。給料がいいことは決して悪いことではないが、それだけでは従業員にとっても企業にとっても望む結果にはならない。
■「働きがい」を創出するための5ステップ
では、待遇面以外に企業は従業員に何を与えることができるのか。本書で挙げているのが「働きがい」だ。
大企業と比べて中小企業は一般的にエンドユーザーとの距離が近く、自分の仕事が誰かの役に立っているという実感を得やすい。また社内での貢献度も大企業と比べて自覚しやすいため、従業員ひとりひとりに対して働きがいを創出しやすいという。
本書によると、働きがいの創出には
1.「相互理解」...経営者と社員の頭と心の中をガラス張りにする
2.「動機形成」...経営者の思いと社員の思いを共振させる
3.「協働意識」...会社をみんなで支え合う意識を育てる
4.「切磋琢磨」...「即戦力」よりも「学び続ける人材」を重視し、人が育つ現場をつくる
5.「評価納得」...職務と成果貢献に応じて粗利を公平に分け合う
の5つのステップがある。
これらの項目からは、働きがいとは組織の上層部が音頭をとって下を従わせる形で作るものではなく、組織の全員でともに作り上げていくものだということがうかがえる。
◇
これらの5ステップをどのように導入していくか。本書ではそのための具体的な解説に多くのページを割いている。中小企業が陥りがちな、社員が「採れない、辞める、育たない」という人材の悩みを解決するために、本書は確かなヒントを与えてくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
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