急速な経済発展によって中流層が増えた中国。
その結果が2013年頃に話題となった「爆買い」である。
今はひと段落した感はあるが、中国人による日本での大量消費が終わったわけではない。今度は中流層ではなく富裕層による、より規模の大きな「爆買い」が始まると語るのは『中国人富裕層のトリセツ』(三栄書房刊)の著者で、自身も中国人富裕層をターゲットにしたインバウンドビジネスを展開する夏川浩氏だ。
不動産、美術品、医療、宿泊や小売り、飲食に至るまで、中国人富裕層による「日本買い」は大きなビジネスチャンスになりえるが、彼らとて手当たり次第に大金を払うわけではない。大きなお金が動くビジネスほど彼らの心をいかに掴むか成否を分ける。
では、巨大な富をつかんだ中国人富裕層にはどのような傾向があり、どんなものを喜ぶのだろうか。
■「中国人富豪=成金」のイメージはもう古い
「中国人の富裕層」といって思い浮かぶのは、恰幅のいい体格に金の太いネックレス、指輪も時計も金ピカという、昔ながらの「成金」のイメージだろう。
しかし夏川氏によると、このスタイルの富裕層は現在60歳前後より上。今中国で増えている富裕層よりもひと回り上なのだという。
新しい世代の中国人富裕層は、こうした「成金」のイメージにはあてはまらない。変に金持ちぶることも、気に入らないことにすぐ大声をあげることもないという。
旅先では買い物三昧という点はさすがに富裕層だが、「カバンはルイ・ヴィトン、時計はロレックス」といったわかりやすいブランド志向ではなく、自分の気に入ったもの、質の高いものには金に糸目をつけないというスタイルのようだ。
■「不動産投資をするなら中国より日本」な理由
では、彼らは日本に何を求めてやってくるのだろうか。
夏川氏いわく、それは「匠の技」と「安全・安心」。メイドインジャパンの高品質な商品に目がないというのはこれまでにもよく語られてきた話でもある。
しかし、これは医療や化粧品、美術品や工芸品だけにとどまらない。どんな業種、業界でも彼らの投資欲、消費欲を掻き立てることは可能である。たとえば不動産投資も、中国本国より日本の方が安心感があるとアピールすることができる。
中国の不動産投資は近年停滞気味。高騰しすぎた都市部の不動産価格に、そろそろ買い手がつかなくなり「バブル崩壊」が起きるのではないかという声もちらほら聞こえてくる。
日本の不動産価格もまた近年は上昇傾向にあるが、オリンピック・パラリンピックやカジノ構想など先に明るい見通しを持てる要素が多い。また投資用マンションの利回りは中国より日本の方が高く、入居率も高い。購入後は不動産管理会社にすべて任せられる安心感があり、メンテナンスもきめ細かい。こうしたことから不動産投資を中国から日本にシフトする中国人が増えているという。
◇
世界の消費の中心を担っているといっても過言ではない中国人富裕層。
本書では、彼らとの長いビジネス経験を持つ夏川氏が、自身の体験を踏まえつつ今も着々と増える中国人富豪たちの実像に迫る。
海外からの消費や投資を呼び込むインバウンドの観点から言っても氏の知見は貴重なもの。ビジネスチャンスをつかむために一読してみてはいかがだろう。
(新刊JP編集部)
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