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コミュ力の高さは語尾に表れる? さりげない気づかいフレーズの使い方

 なれなれしくなく、よそよそしくない。
人に合わせて適切な距離感でコミュニケーションを取れる人は、社内でも社外でも何かと重宝されやすい。当然、仕事の結果を出しやすくもなるだろう。

こうした対人関係の距離感は、人によっては誰に教えられなくてもできる一方、覚えようとしてもなかなか身につかない人もいる。

両者の違いは何なのか。『誰とでも仲良くなれる敬語の使い方』(明日香出版社刊)の著者であり、企業向けのマナー研修講師も務める松岡友子さんに、この点を中心にお話をうかがった。

■「ちょっとした配慮」は言葉づかいに表れる

――本書のコンセプトである「敬語とは、相手との距離感をはかるもの」という考え方が印象的でした。まずは、このようなコンセプトで執筆しようと思った経緯をお聞かせいただけますか。

松岡:担当編集の方と本書の内容を決めるための打ち合わせをしていた際、「部下が自分に対し、すごく仰々しい敬語を使ってきて……」と悩む姿を目の当たりにしたことが、ひとつのきっかけです。

また、ちょうど同じ頃、又吉直樹さんが芥川賞を受賞して、インタビューで失礼な聞き方をしてきた女性記者を「不思議な距離感の人」と表現したことがあったんです。

これらのことにインスピレーションを受け、「距離感」をキーワードにしようと思いました。

――コミュニケーションをうまくとり、人間関係をスムーズに築くためには、今おっしゃった「距離感」が大切になってきます。

松岡:相手との距離感・関係性を正しくつかむことと同時に、距離感にふさわしいマナーを身につけることも大切です。

たとえば、相手のことを心配していることを伝えたい時、相手が友だちであれば「どうした?」と声をかけるでしょうが、先輩であれば「どうしましたか?」、上司なら「どうなさいましたか?」と訊ねますよね。また、小さい子どもが相手なら、「どうしたの?」とかがんで目線を合わせて訊くのではないでしょうか。

つまり、相手との距離感にふさわしい言葉を選ぶこと、それ自体が立派なマナーであり、コミュニケーションの基本なんです。

――本書でも、「仲の良い友だち→お世話になっている先輩→敬意を払うべき上司・お客様」と、相手との距離感に応じた「ふさわしい言い回し」を「×→△→○」という3段階で解説がなされています。△と○の違いは、どういった点にあるのでしょうか。

松岡:ちょっとした配慮をできているかどうか、ですね。

たとえば、出張で使う飛行機のチケットを購入するため、相手に承諾をもらう場合、「朝8時の便を予約しますがいいですか」と訊いたとします。でも、これだけでは△です。

相手の提案に「No」と言うのは勇気の要るものです。人間、「いいですか?」とか「大丈夫ですか?」と訊かれると、つい反射的に「いいですよ」「大丈夫です」と答えたくなるものなんですよ。したがって、この場合、「朝8時の便を予約しますがよろしいでしょうか?」とするのが○でしょう。

さらにいえば、Noと言いにくい相手の気持ちを汲んで、「時間が早すぎて、大変ではないですか?」と、プラスアルファの言葉を付け加えられれば完ぺきですね。

――わざわざそのような「配慮のある一言」について解説されたということは、松岡さんの問題意識として、そういう一言を言える人が減ってきている実感があるからでしょうか。

松岡:おっしゃる通りです。たとえば、エレベーターに乗っているとき等にも、そういったことを感じます。

自分がボタンの傍に立っていたとして、一昔前までは、見ず知らずの人から「すみません、3階もお願いします(ボタンを押してください)」と声をかけられることがありました。

でも最近は、背後からニョキッと誰かの手が伸びてきて、黙ってボタンを押されることが少なくないんですよ。

配慮のある一言どころか、それ以前の問題で、言葉を発する機会自体が減ってきている。こうなってくると、当然、語彙力も低下してしまいます。忌々しき事態だと思います。

――お願いするのは迷惑をかけるような気がして、何も言わずにボタンを押してしまうのかもしれませんね。

松岡:そうなんでしょうね。ところで、先日、「世界幸福度報告書2017」が公表されましたが、調査対象155カ国中、日本は51位でした。

この調査結果を見ていて興味深かったのは、上位国にくらべて日本は「他者への寛容さ」の数値が低かったことです。

世の中がこれだけイライラしていると、「ボタンを押してください」と言うことすら迷惑がられるのではと恐くなってしまう。その意味で、いま申し上げたエレベーターの話というのは、寛容さがなくなってきていることの一つの表れなのかなとも思ったりするんです。

――社会が不寛容になったことで言葉を発しづらくなった。その結果、日本人の語彙力が低下しつつある。現代人が「配慮のある一言」を言えなくなったのは、そういった問題が背景にある、と。

松岡:語彙力の低下に関連して、最近思っていることをもう一つ申し上げると、若い方が「ヤバい」を連発しているのも気になります。

おいしい、まずい、かわいい、かっこいい、困った、うれしい……等、あらゆる印象や感想を「ヤバい」の一言で済ませてしまっている、といいますか。

そのことの何が問題なのかといえば、自分のなかに感情が湧き、いざそれを表そうとしても、「かわいい、かわいくない」といった具合に、「0か100か」みたいな話になってしまいやすいこと。0と100の中間にある部分がゴソッと抜け落ちてしまうんです。

これは「マナー」にも大いに関わってくる話です。相手に合わせて距離感を調節するようなコミュニケーションがとれなくなっているわけですから。  
(後編へ続く)

『誰とでも仲良くなれる敬語の使い方』の著者、松岡友子さん

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