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「ブラック企業はなくならない。でも…」 学生の直球の質問に名経営者たちが語ったこと

 ■SNSで学生たちに評判が広まった大人気講義

今、大学生の間で話題になっている講義がある。
それは、2014年から京都大学で開かれている「企業価値創造と評価」という特別講義だ。

この講義は、京都大学名誉教授である川北英隆氏と、「農林中金バリューインベストメンツ」の常務取締役で投資のプロフェッショナルである奥野一成氏がタッグを組んで始まったものだ。

講義には、毎年度5、6名の日本を代表する経営者が招かれ、学生たちに自身の経営哲学や経営戦略を語る。講義内容は各経営者の自由だ。経営戦略、経営者としての心構え、企業文化、展開する事業の意味など、人によってその切り口はさまざまである。

その講義を書籍化したのが、『京都大学の経営学講義 いま日本を代表する経営者が考えていること』(川北英隆、奥野一成編著、ダイヤモンド社刊)だ。

本書では、2016年度前期の講義が忠実に再現されている、登壇した経営者の面々は実に豪華だ。
積水ハウス、ホシザキ、大和ハウス工業、シスメックス、カルビーと、名だたる企業の経営者たちによる講義が収められている。

まだ知識と理論でしかビジネスを知らない学生にとって、これほど刺激的な講義はないだろう。

■学生と経営者による自由闊達な「質疑応答」

講義のあとには学生との質疑応答が行われるのだが、その模様もしっかり収録されている。
だが、学生が相手だからといって経営者たちの回答はおざなりなものではない。

学生からの質問はさまざまだが、時に経営者に投げかけるには直球なものもある。それに対し、経営者側は真摯に返答する。

「ブラック企業にならない仕組みはないか」と聞かれたカルビー株式会社代表取締役会長兼CEOの松本晃氏は、まず「ブラック企業は永久になくなりません」と返答。その上で「しかし、ブラック企業に勤めたがる人は減る。会社を長く成功させていこうと思ったら、経営者はブラックなことをしてはだめ」と断言する。

こうした学生たちと経営者の率直なやりとりは、学生だけでなく、経営者やリーダーと呼ばれる人たちにとっても得難い知識になるだろう。経営者や管理者として自分が何をなすべきか、会社やチームが問題にどう立ち向かうべきか、ということに悩んでいる人は注目したいところである。

■経営者に必要な「新しい視座」が得られる講義でもある

また、本書はただの講義録では終わっていない。
各講義の後には、長期投資家である奥野氏による「解説」が加えられている。この「解説」は、現在、経営者の立場にある人にとって、ビジネスを発展させるヒントとなるだろう。

「解説」では、経営者たちが行った講義の中からキーワードを拾い上げ、各企業の最新の取り組みや戦略の効果や重要性が語られている。

たとえば、積水ハウスの代表取締役会長兼CEO、和田勇氏の講義からは「CSV戦略」を取り上げている。
「CSV戦略」とは、ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授が提唱した概念で、社会課題の解決と企業の競争力向上・企業価値向上を同時に実現する、という考え方だ。

奥野氏は、「CSV」は、これまでも提唱されてきた「CSR」(環境や社会に対する配慮を大切にする企業の社会的責任)とは異なると述べ、その有用性を説いている。

こうした新しい視座は、経営を担う人にとって重要だ。本書は、これから社会に出る学生と経営者、両方にとっての道標になるだろう。

(新刊JP編集部/大村 佑介)

『京都大学の経営学講義 いま日本を代表する経営者が考えていること』(ダイヤモンド社刊)

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