30代に入って「体重が落ちにくくなった」「代謝が下がったかも」などと感じている人は多いはず。
20代の頃の体型を維持しようと思うと運動や食生活の改善は欠かせませんが、運動が嫌いな人や食べるのが好きな人にとって、節制はストレスです。ならば、最低限の節制で効果を発揮する方法はないのでしょうか。
『がんばらなくても20歳若返るナチュラルホルモン療法』(講談社エディトリアル刊)の著者であり、不足しがちなホルモンを補充することで健康な状態を目指す「ナチュラルホルモン療法」を専門におこなうクリニックを運営する藤森徹也さんによれば、体型的な悩みを解決する上で、「ホルモン」が重要な役割を果たすのだそうです。
今回は、ホルモンと筋肉との関係を中心にお話をうかがいました。
■ストレス過多がつづくと不足しがちなホルモン コルチゾールが心身に与える影響
――インタビューの前半では、ホルモンバランスが、いわゆる「美容」だけでなく、「老い」全般に関わってくるというお話がありました。その意味で、ホルモンバランスは、女性だけでなく男性にとっても重要な問題といえるでしょうか。
藤森:おっしゃるとおりです。たとえば以前、私どものクリニックにお見えになった男性で、こんなケースがありました。当初はうつ病を疑っていたのですが、よくよく調べてみると副腎疲労症候群だということが分かったんです。
――どのようなホルモンが不足すると、副腎疲労症候群になってしまうのでしょうか。
藤森:副腎から分泌されるホルモンとして、コルチゾールというものがあります。これは別名「ストレスホルモン」ともいわれるもので、身体にストレスがかかると分泌されます。
コルチゾールはストレスへの耐久力を増加させる働きがあるため、適量分泌される分には、問題ありません。むしろ、私たちの体調を保ってくれるものです。
でも、短期間であってもあまりに強いストレスにさらされたり、長期間にわたってストレスにさらされつづけると、まずいことになる。副腎は休む間もなく大量のコルチゾールを分泌しつづけることになり、副腎が疲れきってしまうからです。
――副腎が疲れきった状態=副腎疲労症候群ということでしょうか。
藤森:そうですね、もう少しいうと、副腎が疲れて機能低下し、身体がストレスの影響を直接受けることで色々と不具合が生じてしまう。その状態こそ、副腎疲労症候群にほかなりません。
――不具合とは、具体的にどのようなものですか。
藤森:先ほど「当初はうつ病を疑っていた」という言い方をしましたが、副腎疲労症候群は一見すると、うつ病の症状と見分けがつきにくい。
たとえば、突然頭が働かなくなったり、朝起きるのがつらくなったり、すぐにイライラしてしまったり……といった症状が見られます。
副腎疲労とうつ病が併発することもあるので、見極めはなかなか簡単ではありません。専門の医療機関で適切な検査を受ける必要があります。
――副腎疲労症候群だと分かった場合、ナチュラルホルモン療法では、コルチゾールを注入するのですか。
藤森:いえ、症状がかなり深刻な場合を除いて、それはできるだけ避けます。副腎が疲れきっているときに外からコルチゾールを入れてしまうと、副腎は「もう自分では作らなくていいんだ」と思ってしまい、さらに機能を停止してしまうことがあるからです。
それよりも、ストレスをやわらげるために生活環境を変えることを薦めたり、副腎を治すために必要なサプリメントを摂ってもらったり、コルチゾールの原材料になり得るようなホルモンを補充したりといったケアをおこないます。
――コルチゾールの原材料になるホルモンとは何ですか。
藤森:プレグネノロンというホルモンです。これはコレステロールを材料に作られ、体内で様々なホルモンに変換される物質です。
――いま、コレステロールという言葉が出たのでうかがいたいのですが、ダイエットとホルモンとの関連でいえば、何か知っておくべきことはあるでしょうか。
藤森:まず、脂肪が多いと、エストロゲンが過剰に分泌されてしまい、テストステロンというホルモンの作用を抑えてしまいます。ちなみに、テストステロンは男性ホルモンの代表格で、いうなれば、雄としての積極性を左右するものです。
ダイエットを怠り、肥満気味の状態を放置しつづけると、このテストステロンが不足しがちになるという問題がありますね。
――テストステロンが不足すると、具体的にはどのような影響があるのでしょうか。
藤森:ひとつ分かりやすい例を挙げれば、テストステロンの多少は「筋肉のつきやすさ」に影響します。
2000年、『Mayo Clinic Proceedings』という医学雑誌に、こんな面白い研究結果が発表されたんです。男性更年期障害の方を対象に、「テストステロンを補充しながら筋トレをする」「テストステロンを補充するだけで筋トレはしない」「テストステロンを補充しないで筋トレをする」「テストステロン補充も筋トレもしない」という四つのグループに分ける。それらのグループについて、一定期間、経過観察をおこないます。
結果、どのグループの男性の筋肉量が増えたかというと、もちろん一番は「テストステロンを補充しながら筋トレをした」グループなのですが、次に増えたのが「テストステロンを補充するだけで筋トレはしない」グループだったんですよ。
ガソリンがないと車が動かないように、テストステロンが不足した状態でいくら筋トレをがんばっても、筋肉はなかなかつかないということがこの研究結果から分かります。
――最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。
藤森:最近、巷で「アンチエイジング」という言葉をよく耳にしますが、本当の意味でのアンチエイジングは、身体の内側(なか)が若々しいことによって初めて達成できると私は考えています。
つまり、身体の内側(なか)が若々しく健康な状態であって初めて、外見的な美しさも伴ってくる。この状態に持っていくためにも、ナチュラルホルモン療法の可能性をより多くの方に知っていただきたいですね。
(新刊JP編集部)
『がんばらなくても20歳若返るナチュラルホルモン療法』の著者、藤森徹也さん