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論理力だけでは無理 人を動かす「感情」と「ロジック」の使い方

 人に何かを伝える時、数字を使って論理的に説明することができるだろうか?
あるいは、数字を使って現状を把握したり、推測したりするテクニックを持っているだろうか。

財務戦略コンサルタントの田中慎一さんは、著書『役員になれる人の「数字力」の使い方の流儀』(明日香出版社刊)の中で、「数字を使って物事を考えること」の大切さを説くとともに、人を説得する時の「数字の見せ方」についても言及している。

あるメッセージの中で、数字はどのように使われるべきなのか。田中さんにお話を聞いた。

■人を説得するには「数字の見せ方」を工夫せよ
――人を説得する時なども、数字を使うことで説得力が増します。本の中で紹介されていた、田中さんがある会社の経営再建を手がけた時のエピソードを読むと、ただ数字を出せばいいというものではなく、その数字の「見せ方」も大事だということがわかります。
    
田中:そうですね。数字を使ってメッセージを伝える時は、大前提としてビジュアルでわかりやすく伝えること。そのうえで、情報を受け取る側に合わせて情報を最適化するということが大切だと思っています。

自分の周りに全社員を集めて、会社の今期の業績とか来期の目標の話をするとして、いきなりPL(損益計算書)の細かい数字を見せても、皆わからないですよね。

経営幹部だけに話す時はそれでいいのですが、全員に向けて話す場合は、事業部ごとの売上と利益目標だけ伝えれば十分なはずです。自分が相手に理解してほしいメッセージに合わせて、数字の見せ方を最適化するというのは、心がけるべきだと思いますね。

――数字を使って物事を考えることの大切さを強調しつつ、「数字至上主義」「ロジック至上主義」についてはむしろ警鐘を鳴らして、「人の気持ち」や「情熱」の部分を強調されているのがユニークでした。

田中:数字や論理が得意な人ほど、ロジックで全て片付けようとするところがあったりしますが、人ってロジックで納得することはあっても、ロジックで動くことはありません。

いろんな会社を見てきて感じるのですが、組織には特有の慣性がはたらいていて「今のままじゃまずいから組織を変えなきゃいけない」と皆理屈ではわかっていても、なかなか方向転換できないんです。

だから、経営再建をするなら数字やロジックで説得するだけではなく、感情に訴えることも必要になります。僕の場合、会社の現状を数字に落としこんで皆に見せる時に、何も言わないことにしています。

「こんなにひどい状況になっている」とも「ここが悪いからここを変えるべき」とも言わずに、まずは見てもらう。

――なぜですか?

田中:あえて説得せずにいると、会社の人がだんだん自分たちで現状に気づきはじめるんです。

こうなったらしめたもので、自分たちで悪いところに気づけば、良くしたいという気持ちも自然に生まれますし、実現したい理想のイメージもできやすい。ただ、これだけだと次の行動に移らないので、そこから先はより強く感情に訴えないといけません。

――そこもまた一筋縄ではいかなそうですね。

田中:一度会社が落ちてしまうと、社員に負け癖がついてしまうんですよ。最初は会社をもう一度よくしようと思ってがんばるんですけど、結果がともなわないとすぐその熱が冷めてしまう。そこが難しいところかもしれません。
 
――タイトルに「役員になれる人の」とありますが、どの年齢層に向けて書いた、というのはありますか?

田中:20代、30代の若い方に読んでもらえたらうれしいですね。今の若い人は、出世欲よりも、世のため人のためになる仕事をしたいという気持ちが強いといわれます。

その意味ではすごく意識が高いのですが、組織で働くとなると、上にいたほうが確実におもしろいですし、世のため人のためになる仕事にしても、上にいないとできないことがあるのも事実です。組織で上に立つという視点を持つためにも、この本は役立つのではないかと思います。

また、仕事とは別に、今の混沌とした世の中を賢く生きるためには、物事の本質だとか真実を正しく理解することが必要で、数字力はそのためのスキルです。

たとえば少子高齢化にしても、経済の状態にしても、政府や官僚がどうにかしてくれるというような話ではなくて、私たち一人ひとりが取り組んでいくべきものです。

だからこそ正確に理解して、自分なりに答えを考えないといけないわけで、数字はそのための武器になるものだということを、この本を通じて理解してもらえたらうれしいです。
(新刊JP編集部)

『役員になれる人の「数字力」の使い方の流儀』の著者、田中慎一さん

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