突然ですが、普段の生活の中でどんなものに「日本」を感じますか?
「花火」や「風鈴の音」、「醤油の匂い」など人それぞれでしょうが、どれも見たり触れたりすることで、自分のルーツが日本にあることを意識しますよね。時代は移り変わっていくものとはいえ、こういう「日本の心」とも呼べるものは、子どもや孫の代まで残していきたいものです。
『衣食住の神さまシリーズ』(森日和/著、しちだ・教育研究所/刊)は、「着物」「ごはん」「たたみ」という衣食住に欠かせないものを通じて、子どもに日本人の心に触れてもらうための絵本シリーズ。私たち日本人が古くから何を大切に生きてきたか、それらにどんな意味があるかを教えてくれます。
たとえば、日本の家にはたいてい一室は「和室」があるはず。この和室の「たたみ」にも古くから伝わる「作法」があるのを知っていますか?
■できるだけスリ足で歩く
夏休みにおばあちゃんの家を訪れたりこちゃんとにこちゃんは、広々とした和室に感動したのか、二人で相撲をとろうとします。そこにやってきたおばあちゃん。「こらこら、ふたりとも。たたみにも、神さまがいらっしゃるのよ」とたしなめます。
おばあちゃんいわく、「たたみの神さまはね、いつも正座して座っていらっしゃるの。だから、たたみの部屋では神さまに足の裏を見せないように、スリ足で歩くのよ」。こういうことは、子どもだけでなく大人も知らない人がいるかもしれません。また、歩く時は腕もあまり振らずに歩くのが作法なのだそうです。
■縁(へり)は踏まない
これも、今の日本人はあまり気にしていないかもしれません。でも、たたみのへりは少し段差ができていて転びやすいところ。心配性のたたみの神さまに心配をかけないように、できるだけへりは踏まずに歩いて、部屋から出るときは見守ってくれたことにお礼を言うようにしましょう。
「たたみ」だけでなく、あらゆるものに神さまがいると考えて、その神さまの視線を感じながら生活するというのは古くから脈々と受け継がれてきた生き方です。自分の子どもにもこうした「日本の心」を理解して生きていってほしいと考えるなら、このシリーズはきっと役に立ってくれるはず。付録の京言葉による朗読CDもしみじみとした味わいがあります。
グローバル化によって均質化が進む世界だからこそ、自分の生まれ育った土地の価値観や考え方を大事にしていきたいものですね。
(新刊JP編集部)
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