「きれいな歯」「健康な歯」の大切さはわかっていても、歯医者さんって痛いし怖いしで、虫歯でもない限りなかなか行く気になりませんよね。
でも、ちょっと待ってください。虫歯がなくても歯周病になることはありますし、口の中の状態が悪いと、さまざまな病気を引き起こしてしまうかもしれません。
『先生、歯がキレイだと人生もうまくいくのですか?』(カナリアコミュニケーションズ/刊)は定期的に歯科で口内のケアをしないことのリスクや、ケアをすることで得られるメリットについて、横浜で「デンタルライフクリニック」を運営する磯部知巳さんが教えてくれる一冊。
「歯を健康に保つ」メリットは過小評価されがちですが、実際には歯がきれいになることで周囲の人に与える印象は大きく変わり、仕事や恋愛など、その効果は計りしれません。
磯部さんによると、歯の健康は人生の充実度と大きく関係するのだとか。一体どういうことなのでしょうか?
――磯部さんの新刊に『先生、歯がキレイだと人生もうまくいくのですか?』ついてお話を伺えればと思います。本の中で書かれているように、私たちは虫歯などがないとなかなか歯医者さんに行きません。結果、知らない間に歯周病が進行してしまうということが出てきます。そこでお聞きしたいのが、虫歯などの治療がなくても定期的に歯科にかかるという場合、どれくらいの頻度が望ましいのかということです。
磯部:理想をいえば「月に一度」くらいの頻度が望ましいです。自分自身ではブラッシングできない箇所というのが口の中には必ずあって、どうしてもそこに汚れが溜まってしまいます。それを歯科でチェックしてもらうということですね。
ただ、「月に一度」というのは実際にはなかなか難しいでしょうから、三カ月に一度くらいは歯科にかかられるといいでしょう。
――歯周病のリスクはかねてから指摘されていますが、その原因として歯磨き以外のところではどんなものが挙げられますか?
磯部:生活習慣の乱れでしょうね。歯周病は通常、40代以上の方の生活習慣病の一つとして位置づけられていますが、まれに20代、30代の若い方でもものすごく歯周病が進んでしまって、歯がぐらついたり、歯を支えている土台が溶けてしまう人がいます。
たとえば食生活が乱れている方ですとか、徹夜が多い方、接待などでお酒を飲む機会が多い方というのは、特に気をつけた方がいいですね。歯茎の腫れや化膿、出血といった症状があるのであれば早めに歯科にかかることをおすすめします。
――今おっしゃった若い方の歯周病ですが、こまめに歯磨きをしていてもなってしまうものなのでしょうか。
磯部:若い方の中では、歯磨きをしているかどうかということよりも、その人の特性によるところが大きいです。
身長や体型が人によって違うように、もともと口の中の細菌が多い人がいらっしゃいます。これは3歳くらいまでの間に親御さんからもらうことが多くて、たとえば口移しで食事を与えることで口の中の細菌まで子どもに移ることもあります。
――なかなか歯科にかかる気にならない理由の一つに「痛い・怖い」という歯科に対するイメージがあります。最近の歯科治療は痛くない方向に変わってきているというお話も聞きますが、このあたりについてはいかがですか?
磯部:痛みというのは緊張度と関連が強くて、歯科治療で痛みが強い方というのは、緊張している方が多いんです。その緊張を取ることで痛みを和らげるという方法が普及してきています。
これは「鎮静法」というのですが、主に二つありまして、患者さんに気持ちをリラックスさせるガスを吸ってもらう「笑気ガス鎮静法」と、同じ効果がある薬を点滴で体内に入れる「静脈内鎮静法」があります。
それと、今は麻酔に使われる針がどんどん細くなってきてるので、刺す時の痛みはかなり出にくくなってきていると思います。
――歯科治療で「詰め物」として使われる銀歯で金属アレルギーの症状が出てしまうことがあるというのは盲点でした。患者さんの中には、アレルギーの症状が出ているのに、それと気づかない人が多いかもしれませんね。
磯部:私の世代の人が子どもの頃に、「アマルガム」という水銀を使った合金がよく詰め物として使われていたのですが、この物質へのアレルギーで体に発疹ができたり、ひどい場合には呼吸困難になったりといったケースが出たことがありました。
それと、歯にかぶせる「銀歯」にしても、金や銀、パラジウム、ニッケル、クロムなど、さまざまな金属が使われています。それらが唾液に溶け出したり、歯茎に染み込んだりします。体内に吸収され、他の臓器に蓄積してアレルギー症状を起こすことがあります。
内臓に取り込まれた場合は分かりにくいのですが、歯茎に溶け出した金属が付着したケースは見た目にあらわれることが多いです。歯茎が銀歯の周りだけ赤くなったり、逆に灰色っぽく変色したり、爛れたりした場合、アレルギー症状かもしれません。
――「詰め物」だけでなく、インプラントにも金属が使われていますよね。
磯部:インプラントに使われるのはチタンで、チタンはアレルギーを起こしにくいと言われています。
ただ、それでもアレルギーになる可能性がまったくないわけではないですし、できる限り体の中に金属は入れない方がいいですね。今のチタンのインプラントは、「噛む」ということに関してはかなりパフォーマンスが高いのですが、体にもっと優しい方法をということを望むであれば「ジルコニアインプラント」という、セラミックのインプラントが良いと思います。体に優しいということで、ご要望に応じて、私はこちらを積極的に使うようにしています。
――また、本書の中には口の中に溶け出した金属が体内に取り込まれてしまうことで起こりうるリスクとして内臓系の疾患を挙げています。特に怖いのが癌なのですが、こちらも「数としては少ないが可能性としてはありうる」という認識でいいのでしょうか。
磯部:よく知られていますけども、癌というのは元々は遺伝子のコピーのエラーで起こります。
遺伝子が細胞分裂を起こす時、本来ならば正常な遺伝子がコピーされて増えるわけですけども、まれに異常なコピーができてしまうと。これが癌になります。こういった「コピーのエラー」が起こる過程に金属が関わっている可能性がある、というように理解していただけたらいいと思います。
もう一つ、遺伝子のコピーの異常の原因になるとされているのが「慢性刺激」です。
口の中に金属が入っていると、ガルバニー電流という電流が流れて歯茎を刺激します。この刺激は金属を取り出さない限りずっと続く「慢性刺激」です。これによって遺伝子のコピーにエラーが出てしまうということも可能性として考えられます。
もちろん、必ず発症するというわけではありません。過敏になってはかえってよくありません。あくまで病気や体の不調のリスクが増えると御理解ください。そういったことについても本の中で触れているので、皆さんの健康の役に立てるのではないかと思います。
(後編につづく)
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