世の中にはあんな本やこんな本、いろんな本がある。そのテーマも十人十色。「感動したい本が読みたい!」「思いっきり怖い本を味わいたい」と思っても、 どんな本を選べばいいのか分からない! とお悩みの方も多いはずでは?
そんなときにあなたの味方になるのが書店員さんたちだ。本のコンシェルジュとしてあなたを本の世界に誘ってくれる書店員さんたち。
彼らに、テーマごとにお勧めしたい本を3冊答えてもらうのが、この「わたしの3冊」だ。
6月のテーマは「ジメジメしたこの季節、読めば気分がスッキリする3冊」。
この季節は雨が多く、気持ちがふさぎ込みがち。そんなときに読んでほしい、気分がスッキリする3冊を選んでいただいた。今回の選定者は川越駅前の精文堂のスタッフの皆さんだ。どんな本を選んだのだろうか?
◇ ◇ ◇
1)『恋文の技術』
京都から能登半島の研究所へ飛ばされた大学院生。この作品は彼が京都にいるかつての仲間へ「文通修行」と称して送りつける手紙を通じて語られる書簡体小説です。
恋に悩む友人には厳しく、思春期の教え子には優しく、意地悪な先輩には生意気に、勉学に励む妹には偉そうに、既知の間柄である小説家の先生には皮肉を込めて、しかし本当に想いを届けたい相手にはいつまでたっても手紙を書けない主人公。「文通修行中」という言い訳を盾に屁理屈をこねるばかり。
読みながら思わず笑みがこぼれる愉快な森見登美彦先生の作品。「阿呆な男」の「阿呆な手紙」。しかし仲間達から主人公に宛てた手紙では、いかに彼が皆に愛されているかが伝わってきます。
しょうもなく、ばかばかしい内容の手紙ばかりだけど、だからこそ生まれる不思議な感動があり、読み終えた後には清々しさすらある、そんなおすすめの一冊です。(書評:川南哲也)
『恋文の技術』
著者:森見登美彦
出版社:ポプラ社
定価(税込み):670円
2)『姑獲鳥の夏』
意識と無意識、現実と夢、そして――ヒトとアヤカシ。僕達は知らず知らずの内に、ごく自然と、それらの相反する事物のあいだに境界線を引いて生きている。逆に言えば、そうした実際的な行為こそが、僕達の生活を健やかなものとしてくれているわけだ。当然である。誰だって右も左も分からない曖昧な世界になんて生きたくない。しかし京極夏彦の著書『姑獲鳥の夏』の登場人物である中禅寺秋彦は言う。「思い出も、現在も、君の脳がいい加減に作り出したものかもしれないじゃないか」と。なるほど、その通りなのだ。僕達の目が過去に視てきたモノ、そして僕達の指が今触れているモノ、それが幻想ではなく現実なのだということを、一体誰が、どうやって証明してくれると言うのだろうか。僕達が活きるこの世界は実に脆く、儚い。京極のミステリイはその事をいつも思い出させてくれる。背筋の凍るような事件と、爽快な謎解きを添えて。(書評:吉澤享祐)
『姑獲鳥の夏』
著者:京極夏彦
出版社:講談社
定価(税込み):864円
3)『西の魔女が死んだ』
主人公「まい」が大好きなおばあちゃん、西の魔女は、箒で空を飛んだり、とんがり帽子を被ってはいない。魔女というと、特別な力を持った、選ばれた人だけがなれるようなものを想像するが、彼女が言うその力とは人より歌が上手だったり、足が早かったり、多かれ少なかれみんなが持っているものだという。意志の力を自分でコントロールすること、それが魔女の修行だ。自分で決めた時間に寝起きをし、本を読み、運動をする。そういった日々の生活そのものが、精神を鍛える場であり、精神=心を強く成長させる場になるという。この作品を読んでいると、毎日にちょっと疲れてしまっていても、規則正しく、穏やかで健やかに過ごすという何気ないことへの努力を素直に受け入れさせてくれて、誰にでも魔女になれる可能性を感じさせてくれる。
意外にも「魔女」というファンタジーなキーワードがこの物語と私達の現実との架け橋となり、スッキリと前向きな気持ちになれる作品です。(書評:飯塚美紗)
『西の魔女が死んだ』
著者:梨木香歩
出版社:新潮社
定価(税込み):464円
◇ ◇ ◇
【今回ご協力いただいた書店】
■精文堂
1階は書籍・雑誌・文具コーナー、2階はプラモデル・ミニ四駆・トレーディングカードコーナーとなっています。
今年また5月には「精文堂マンガ大賞」が開かれるなど、ユニークなフェアも行われています。
■店舗ホームページ
http://www.ms-seibundo.com/
https://twitter.com/seibundobooks
住所:埼玉県川越市脇田本町6-3
TEL:049-247-0025
■アクセス
JR川越・埼京線川越駅、東武東上線川越駅より徒歩2分ほど
■営業時間
10:00~24:00
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