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損すると分かっているのにどうして人は宝くじを買うのか?

 日本で最も親しまれている「ギャンブル」とは何だろう。おそらく、その一つにあがるのが「宝くじ」ではないだろうか。
 日本には「ジャンボ宝くじ」と呼ばれる、当選額が高額な宝くじが5つある。「グリーンジャンボ」「ドリームジャンボ」「サマージャンボ」「オータムジャンボ」「年末ジャンボ」だ。この時期だと「年末ジャンボ宝くじ」が話題に上る。

 この宝くじ、実は私たちにとって“割に合わない”ギャンブルだ。
 『お金はサルを進化させたか』(野口真人/著、日経BP社/刊)によれば、宝くじの払い戻し率は法律によって50%を超えてはならないとされており、地方競馬や競艇などといった公益ギャンブルの払い戻し率よりも低い。
 つまり、宝くじは「割に合わない」のだが、どうして毎年たくさんの人が購入するのだろうか? 『お金はサルを進化させたか』はそのナゾに迫っている。

■損すると分かっているのに買ってしまう仕掛け
 野口さんによれば、宝くじには「損すると分かっているのに買ってしまう仕掛け」が入っていると考えられるという。
 まずはインフレ化の一途を歩む1等の賞金。もともとは宝くじ1枚あたりの当選金は額面金額の20万倍が上限だったが、1998年に額面金額の100万倍に改定され、さらに2012年には250万倍にまで引き上げられた。2014年の年末ジャンボ宝くじは1等5億円、前後賞を合わせると7億円にまで膨れ上がっている。
 ただ、だいたい宝くじの1等賞金としてイメージが膨らむのは2億か3億円くらいだろう。この金額、何かを連想させるが、なんだろうか。
…そうサラリーマンの生涯賃金だ。
 野口さんはこの「3億円」という数字が人々にさまざまな想像を可能にさせると指摘する。これは100万円でも、そして100億円でもいけない。100億円はあまりにも巨額過ぎてイメージができにくくなるのだ。
 宝くじ券の1枚の値段は300円。1等3億円ならば、それが100万倍になって返ってくる。その効用(満足感)を考えてしまうと、1等の当たる確率がいくら低かろうとも気にならなくなってしまうのかもしれない(ちなみに1等の当たり確率は1000万分の1であると野口さんは述べている)。

■「これだけ外れたのだから次は当たるかもしれない」の罠
 毎年宝くじを買っては外れている人は、もしかしたら「毎回外れているのだから、今回は当たるかもしれない」と思っているかもしれない。
 しかし、少々の回数、宝くじを買ったところで1等が当たる確率は上がらないと野口さんは指摘する。もし、1等が1000万分の1で当たる宝くじを1000万回買ったとしても、1等の確率は63.2%にまでしか高まらない。逆に言えば、宝くじは「当たらなくてあたりまえ」。だから、1000回連続で外しても不自然さを感じず、「次こそ」とチャレンジしてしまうのだ。
 もう一つ、「今まで100万円も宝くじに費やしてきたのだから、これを取り返すまでは止められない」と考えてしまう人もいるはずだ。この100万円は投資では「埋没コスト(サンク・コスト)」と呼ばれ、次の投資判断に何の影響も与えないものだ。人間の心理として、少し負けが大きくなっても、一度当選すればすべて報われると感じてしまうものだが、ギャンブルにのめりこむ原因はこういうところにあるのかもしれない。

 私たちはお金を賢く使えておらず。損な行動ばかりをとっていると言われたら、どう思うだろうか。でも、『お金はサルを進化させたか』を読むと、それが本当であることが分かる。
 本書はファイナンスの理論や行動経済学などを下敷きにしながら、お金に束縛されない人生を歩むための考え方を教えてくれる一冊。お金に悩む人生から抜け出すためにも、参考にしたい内容が詰まっている。
(新刊JP編集部)

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