「イノベーション」という言葉は、どんな企業にとっても魅力的に響くものだ。しかし、「イノベーション」を起こすことの難しさも、企業人であれば重々承知だろう。
よく「既成概念を捨てること」や「常識を疑うこと」といった要素が、イノベーションに必要なものとしてあげられるが、実際のところこれで生まれるのはあくまでアイデアにすぎない。そのアイデアを形にするためには、障壁をものともしない行動力と意思を持った人材、つまり「イノベーター」が必要となる。
しかし、こういった人材は自分で起業してしまった方が手っ取り早いせいか、基本的にはあまり会社に入ってこないはずだ。つまり、既存の企業が「イノベーション」を起こすためには、今いる人材を「イノベーター」に育てないといけないのである。
■「イノベーター」に必須の気質とは?
組織改革・人材育成を促す企業研修に定評がある株式会社ワークハピネスを経営する吉村慎吾さんは、著書『イノベーターズ 革新的価値創造者たち---イノベーターが生まれる組織の法則』(ダイヤモンド社/刊)で、イノベーターに共通する意識構造についてつづっている。
本書によると、一般的なサラリーマンとイノベーターでは、価値観や能力、行動において顕著な差がある。
サラリーマンの自己認識が「組織の歯車」であるのに対して、イノベーターになりうる人材は、はじめから自分を「イノベーター」だと認識する。この自己認識の違いが行動や価値観に反映するのだ。
たとえば、サラリーマンは「協調」「期待に応えること」に重きを置くが、イノベーターが重視するのは「挑戦」「独創的創造」。サラリーマンが前例重視の行動をとるのに対して、イノベーターは誰もやったことのないことを、粘り強く実行していく。
どちらがいいとか悪いといった話ではなく、これだけ両者の気質には違いがあるということだ。
■「サラリーマン」から「イノベーター」へ。意識改革のコツ
だからこそ、会社員にイノベーターとしてのマインドを植えつけるのは簡単ではない。
吉村さんは、そのための方法として社員たちのアイデンティティを変える手助けをすることを勧めている。つまり「組織の歯車」という自己認識が少しでも変わるように仕向けるのである。
かつて吉村さんは、自社の社員に対して「クライアントのワークハピネスを増やすチェンジエージェントだ!」と呼びかけたことがあるという。つまり社員たちの「組織の歯車」という自己認識を「君たちはクライアントのワークハピネスを増やすチェンジエージェント」に変えようとしたのだ。
これはすぐに成果として表れた。
徐々に自己認識を変えた社員たちは「チェンジエージェント」として何をすべきかを考え始め、それは彼らの行動を変えていったという。
「集団の中の一人」から「一人の独立した創造者」へ。会社員にイノベーターとしてのマインドが目覚めた瞬間だと言えるだろう。
組織で働くことに慣れきってしまった人材を、イノベーターに変えることは並大抵のことではないが、今の社会でそれが求められているのも事実。
本書では、「組織内で働くイノベーター」を増やす方法を紹介しており、組織のマネジメントに関わる人にとっては興味深い内容になっている。
(新刊JP編集部)
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