「勉強させるにはどうすればいいの?」「上の子と下の子の仲が悪い」「ひとりっこでわがままに育ってしまわないか心配」……子育ての悩みは尽きないもの。
そんな悩めるお母さんたちの味方になる一冊が『この「魔法のメガネ」で、子どもの心が見えてくる』(七田厚、澤谷鑛/著、学研パブリッシング/刊)です。
本書はしちだ・教育研究所の七田厚さんと、カウンセラーの澤谷鑛さんによる共著で、第1部では七田さんによるお悩みQ&A、第2部には澤谷さんによる子育ての悩みをめぐる物語が掲載されており、お母さんたちの子育てについてのモヤモヤを解きほぐしてくれます。
今回は、共著者の一人である七田さんにインタビューを敢行。前編では書籍出版の経緯や、「しつけ」の現場についてお話をうかがいました。
(新刊JP編集部)
■母親に「ババア!」と言い放つ子ども
―この『この「魔法のメガネ」で、子どもの心が見えてくる』はカウンセラーの澤谷鑛さんとの共著となっていて、子育てをしている母親の悩み相談が書かれています。共著者の澤谷さんとはどのようなつながりがあったのですか?
七田:もともとのつながりは私の父である七田眞です。父は5年ほど前に亡くなったのですが、亡くなる4ヶ月ほど前の2008年12月に、澤谷さんと合同の講演会をしているんですね。そのご縁を元に、父が亡くなってから1年くらい経った後に、澤谷さんを訪ねようと思いまして、会いに行ったんです。
―どうして急に会いに行こうと思ったのですか?
七田:その時に、父とご縁のあった方々を訪ねてみたいと思ったんですね。生前に共著を出した方、一緒に講演をされた方…いろいろな方にお会いしようと。実は私自身は澤谷さんとお会いしたことがなかったので、当社の父と澤谷さんの講演会のコーディネーターをしたスタッフにお願いをして、京都にいらっしゃる澤谷さんの元へうかがいました。
そこでお話をしている中で、澤谷さんから「お父さんと一緒に講演をしたのだから、息子のあなたとも講演をしたい」というお話をいただきまして、一緒に講演をして、さらに共著を出すという流れになったのです。
―本書は七田さんにとって、澤谷さんとは2冊目の共著になりますね。前著は『いのちの教育の物語』というタイトルでした。
七田:はい、そうなんです。昨年、その本を出したのですが、それぞれが書き下ろした章と、講演を文字化した章、また、対談形式の章から成っています。本書はそうではなく、私のQ&Aパートと、澤谷さんの物語パートの2つから出来ています。
―そういえば、七田さんと澤谷さんはお名前が同じ音なんですよね。
七田:そうなんですよね(笑)私も、澤谷さんも「コウ」ですからね。結構珍しいと思うんですよ。
―本書の第一部「お母さんの心が軽くなるあれこれQ&A」では、子どもと母親の関係についてのお悩み相談という形式で七田さんが書かれています。この81個の相談は、七田さんの元に寄せられたものなのですか?
七田:そうですね。当社は父が創業して以来、ずっと子育ての相談を受け付けてきていまして、その中の相談が結構入っています。また、最近は生活環境が一気に変わって、新たな悩みも出てきています。スマートフォンどうすればいいの? とか。こうした悩みは、この本を作る際にお手伝いいただいた女性ライターのママ友から、実際に上がってきたものです。
―確かにスマートフォンを持った子どもが「LINE依存」になってしまったという話もありますからね。
七田:愛知県刈谷市の小中学校では、午後9時以降スマートフォンや携帯電話の使用を禁止する取り組みを4月から始めたそうです。とにかく時代の変化が速いので、その分、子育ての悩みも増えているといえます。
―第一部の第二章のテーマは「しつけ」ですが、どこまで家庭でしつけるべきかという話もあります。
七田:私は学校でしつけを1から教えるのは無理だと思っています。それは家庭ですべきことであって、家庭ではできないことを学校で補うのが理想的です。例えば上下関係や団体行動などの、大勢の中で学ぶものは学校で身につけるべきで、やはり基本は家庭だと思いますよ。
子育ての一つの到達点は「自立」です。親や先生、友達の手を借りずにできるか、学習面だけでなく生活面もそうですよね。社会生活に適応できるかどうか。それは家庭で教えないといけないことだと思いますね。
―言うことを聞かないときに「叱る」基準というのも、家庭によって違いますよね。本書では「言っても聞かないときのゲンコツは絶対にいけないことですか?」という質問が載っています。
七田:私自身は親から体罰を受けたことがないのですが、自分の子どもにはビンタをしたことがあります。子どもが小さい頃、二人でお風呂に入っているとき、あまりにふざけるから「もう一回やったら叩くよ」と言った直後に、またふざけてしまったので…。その子の下に2人、子どもがいるのですが、その子たちは叩いたことがないです。
―やっぱり下の子どもは、お兄さんのことを見ているんでしょうね。
七田:それはあると思います。私には妹と弟がいるのですが、弟は小さなころ、母に叱られるようなことを言って、よく叱られていました。それは僕が叱られることがなかったので、参考にならなかったのでしょうね。
でも、子どもって、親がどこまでなら許してくれるのか、はかっているようなところがありますよね。本気で悪さをしているのではなく、親の出方を見ている。そこで何もしないと、親はなめられてしまうから、線引きをすることが必要です。
少し前の話ですが、幼稚園くらいの男の子に「ババア!」と言われて、何も言い返さないお母さんがいたんです。それは、間違いだと思います。人として言っちゃいけないことだし、あってはならないことです。普段は友達のような付き合いをしていても、そういうときは烈火の如く怒らないと、子どもには伝わりません。
このエピソードで一番問題なのは、その子の親に対する態度が、他のところでも出てしまうことです。そうならないように、「これをしたら叱られる」「ここまでなら叱られない」という線をはっきりとさせるべきでしょう。人として大事なことを身につけさせないと、自信を持って子どもを外に送り出せなくなります。
(後編へ続く)
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