「日本、あるいは日本人の良さはどんなところにありますか?」と聞かれた時、すぐに答えられる人は、実はあまり多くはないかもしれません。
しかし、どんな人でも「和」や「結い」という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!第二巻:「和」と「結い」の心と対等意識』(彩雲出版/刊)の著者で「日本の心をつたえる会」代表の小名木善行さんは、この「和」と「結い」こそ、欧米人や他のアジア人にはない、日本人に特有の美しい精神性だとして、この精神を体現するような人物とそのエピソードを教えてくれます。
■「和」と「結い」
「和」という言葉はよく日本や日本人を言いあらわすのに使われますが、「結い」はあまり馴染みがないかもしれません。
「和」とは、自分さえよければいいというのではなく、まず全体のことを考える心を指します。全体あっての個人という考えです。
対して「結い」は、もともとは田植えや屋根葺きなどの際の協同労働を指す言葉でした。これらの作業はたいへんな労力を必要としますから、近所の人が総出で力を合わせて行っていたそう。つまり、「結い」とは「和の精神」の表れなのです。
■強硬派を欺いて終戦工作を進めた鈴木貫太郎
この精神性を備えた人物として、本書では太平洋戦争終結時の総理大臣、鈴木貫太郎を挙げています。
貫太郎が総理大臣になったのは、戦況も押し迫った昭和20年4月のことでした。戦況悪化の責任をとって総辞職した小磯國昭内閣の後継として、重臣会議で総理に指名された貫太郎でしたが、始めは固辞。時の昭和天皇の説得によってようやく首を縦に振りました。
この内閣での貫太郎の役目は、なんとしても戦争を収めて和平の道を探ること。しかし、閣内には「断固戦闘を継続すべし」という強硬派が多く残っていました。
彼らに知られることなく、アメリカ側に講和の意を伝えるために、貫太郎は一計を案じます。
強硬派の重臣たちが揃う会議で「徹底抗戦で利がなければ死あるのみ」と机を叩いて訴えた貫太郎は、その翌日に臨時議会を召集。施政方針演説を行い、こんな発言をしました。
「わが国体(天皇を中心とした秩序)を離れてわが国民は存在しない。敵の揚言する無条件降伏なるものは、畢竟するにわが一億国民の死を意味する。われわれは一に戦うのみである。……」
あたかも戦争継続を宣言しているように聞こえますが、実は違います。よく読めばわかりますが、この発言からは「我が国体を維持できれば、講和を受け入れる用意がある」というメッセージを見出すことができます。
つまり、貫太郎はこの演説を通して、無条件降伏に「天皇の地位の保障」という唯一の条件をつけて「平和」への意思を発信していたのです。そして、このメッセージは伝わり、アメリカは日本の終戦への意思を悟ったといいます。
これは、強硬派に屈せず、つねに国民のことを考えるという、貫太郎の「和の精神」があったからこそ成しえたことだといえるのではないでしょうか。
本書には、日本人の美徳ともいえる「和」と「結い」を備えた人物のエピソードが有名無名含めて、数多く取り上げられています。
欧米的な個人主義に馴染みつつある日本ですが、本書を読めば私たちの文化的・精神的なルーツを意識できるはず。そして、日本人とはどんな民族で、どんな点が優れているのかを堂々と語れるようになるはずです。
(新刊JP編集部)
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