フジテレビ系アニメ『ワンピース』の主題歌「HANDS UP!」で、昨年の「輝く!日本レコード大賞最優秀新人賞」に輝いた、今注目のアーティスト新里宏太さん。彼が受賞後のインタビューの中で、「この本を読んで、自分の殻を破ることができました」と語ったニュースが流れたことで、各ネット書店のランキングで1位を獲得し、話題となっている本が『メンタリズムの罠』(扶桑社/刊)です。
この本は「メンタリズム」で一躍有名になったDaiGoさんが、イギリスのメンタリスト、ダレン・ブラウンさんの著作を翻訳したもの。これまで超能力だとされてきたパフォーマンスに、心理学などの科学的な視点を持ち込んだ先駆者として知られるブラウンさんがパフォーマンスで利用する心理テクニックが、本書の中では惜しげもなく披露されています。
注目すべきは、これらのテクニックは実は私たちも使うことができる点。
本書には、個人的な変化のためのツールとして役立つ「自信と、人に与える影響」「混乱と自己防衛」など、日常の中で使うことができる心理テクニックが取り上げられています。
■怖いお兄さんに絡まれたらどう切り抜けるか
交番や助けてくれる人がいない状況で「怖いお兄さんたち」に絡まれる、というのは想像もしたくないような最悪の事態です。
こんな時、ほとんどの人は金品の要求や単なる言いがかりであったりする相手の物言いにまともに応対してしまいます。しかし、経験したことのある人ならわかるはずですが、このやり方では会話が相手のペースになってしまい、どんどん事態が悪い方向に進んでしまいます。結果としてお金を取られたり、暴行を受けたりということに。
ダレンさんも実際にこんな場面に出くわしたことがあるといいます。
道を歩いていると、大声で言い争う男女が向こうからやってきたため、避けようとしたダレンさんでしたが、「てめー何見てんだよ!」と男の方に絡まれてしまいます。このままではさらにいちゃもんをつけられて、さらには殴られてしまうかもしれない。そう考えた彼でしたが、結果的には暴行を受けることもお金を取られることもなくその場を切り抜けることができました。
一体、ダレンさんは何をしたのでしょうか?
■恐喝や言いがかりにまともに返答するのはNG
ダレンさんはリラックスした親しみやすい口調でこう答えました。
「私の家の塀は、120センチもないんだ」
すると、相手の男は一瞬止まって「なんだって?」と聞き返したそうです。
ダレンさんはもう一度「私の家の塀は120センチもないんだ。でも、私はスペインに少し住んでいたことがあって、きみもあそこの塀を見てみるべきだよ――巨大で、これくらいあるんだ!」さらに「でもここではさらに低いんだ。これを見てよ!」と道の脇にあった花壇の、レンガを三段積んだだけの塀を指すと、相手は戦意を失って「くそぉぉぉぉ…」と言ったままその場に崩れ落ちたといいます。
■相手を混乱させ主導権を握る
絡んできた男に何が起こったか?そう、彼は混乱してしまったのです。
「てめー何見てんだよ!」という自分の問いかけに対して、場にそぐわないフレンドリーな雰囲気で完全に文脈と外れたことを返されたことで、彼はまずその返事を理解しなければなりませんでした。
そして、「なんだって?」と聞き返しても、その混乱を解決してくれるような言葉は出てきません。結果的に彼は心のバランスを崩して混乱し、会話の主導権を失ってしまったのです。
ダレンさんは「想定外の事態に人は混乱してしまう」という心の性質を利用したといえます。
全てのケースでこのやり方が通用するかはわかりませんが、それでもやってみる価値はあるはず。少なくとも、相手の言葉を聞いてそれに答えるという会話では、状況を打開することはできません。
今回紹介したものの他にも様々な心理テクニックが掲載されていますので、知的好奇心を満たすとともに実用的な使い道を考えてみるのも楽しいかもしれません。
(新刊JP編集部)
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