サービス残業、低賃金、ワンマン経営、パワハラの横行……こうしたブラック企業に対する世間の目は年々厳しくなっており、厚生労働省が9月の「過重労働重点監督月間」に際して、ブラック企業の実態調査や社名公表に踏み切る姿勢を明らかにしたのは記憶に新しい。
しかし、明確な法令違反をしていなくても、感覚だけでブラックと批判される企業もある。投資や稼ぎ方についての著書を多く執筆している午堂登紀雄氏は新刊『貧乏人が激怒する ブラック日本の真実』(光文社/刊)において、法令違反をしている企業は是正されるべきだが、ブラックか否かを精査する前に感情的に盛り上がっているケースが多い印象があると語る。そしてブラック企業を叩いている人の多くは情報弱者、いわゆる“情弱”であると主張している。
情弱は多くの場合、暗鬱な側面ばかりフォーカスし、その責任を企業に転嫁してしまう。労働時間が長くても生き生きと好きな仕事をしている人もいるのに、自らの目で確かめずにただ叩いている人もいる。
こうした背景を受けて、午堂氏はいくつかの主張や疑問を従業員やブラック企業を叩く人たちに投げかけている。
■「自分の会社をブラックだと批判する時間、もったいなくない?」
傍からはブラックに見えても、本人にとってはホワイトかもしれない。傍からはホワイトに見えても、本人はブラックと感じているかもしれない。厳しい環境をイヤだと感じる人もいれば、自分を鍛えてくれるビジネススクールだと捉えている人もいる。
つまり、大変だとか辛いだとか、はたまたブラックかどうかというのは、法令違反の場合は別として、本人のスタンスや感じ方によってまったく異なるということだ。にもかかわらず、労働時間などの一側面だけを見てブラックだと叩くのは、非生産的ではないだろうか。
それならば、自分が努力して、もっとよい条件の会社に移れる実力をつけるか、その会社の柱となるような存在になったほうがいいはずだ。そうすれば、今の会社もあなたを手放さないように条件を改善してくる可能性だってゼロではない。
会社のアラ探しをしたり、会社とケンカをしたところで何も生まれない。その間を自分磨きにあてることで、最適な労働環境を選べる力をつけることのほうを優先すべきではないだろうか。
■「ブラック企業が嫌なら、なんで辞めないの?」
ブラックな環境で働き続ける理由は一体なんだろうか。「辞めさせてもらえない」「次の就職先が見つからない」といった声があがりそうだが、それは思い込みに過ぎない。
会社が辞表を受け取ってくれないなら、給料をもらった翌日から会社に行かず、配達証明郵便か内容証明郵便で辞表を送ればいい。そんな辞め方は無責任だ、不義理だというかもしれないが、心身を壊してしまっては元も子もない。
「次の就職先が見つからない」といっても、選り好みしなければ求人はいくらでもある。午堂氏は「仕事がないと言う人に限って、自分の能力を棚に上げて、職種や待遇にわがままを言っているだけ」だという。選り好みしたいなら、そうできる実力をつけるしかない。
■「そんなに嫌なら、自分でホワイト企業を作ればいい」
心の底から「ブラック企業は是正されるべきだ」という正義感があるなら、理想的な会社を自分で実現させることもできるはず。自分の手でホワイト企業を立ち上げて、今後ブラック企業が生まれないように、そのノウハウを公開すればいいのだ。
叩くだけよりも、自ら行動し範を示したほうが社会的にも意義がある。しかし午堂氏は、「ブラックはけしからん」と言う人でそんな会社を立ち上げたという事例を聞いたことはないと言う。
ブラックを叩いている人たちは、ニュース記事やネットの声といった表面的な情報で評論家的に叩いているだけ。これはまさに情弱に特有の行動だ。
午堂氏のブラック企業に対する言及を読んでいくと、ブラック企業がなくならないのは、もちろん企業側にも責任があるものの、社員の側にも問題があるように思えてくる。また、熱心に叩いている人に対しては「安全圏から文句を言うのみで行動を起こさない人は、正義感を装っている自分に酔っているだけ」と強烈な批判を展開する。
午堂氏は、目くじら立ててブラック叩きをするよりも、頭の切り替えをすることを推奨している。
たとえば、仮にブラック的な環境であっても、楽しめるよう工夫したり、逆境をチャンスだと捉えて努力しようとすれば、自分が成長できる環境になるわけだ。自分を磨き、何事かを成さんと邁進している人には、ブラック企業だと騒いでいるヒマはないのだから。
『貧乏人が激怒する ブラック日本の真実』は「ブラック化する社会の本質を見抜く武装トレーニング集」を謳っており、ブラックから抜け出すためには、氾濫する情報にただ流されるのではなく、情報の1つひとつに対し想像力を働かせ、正しいと思った行動をとることが求められると指摘している。
その他にも本当の情報強者になるための午堂氏流アドバイスがつづられているので、参考にしてみるといいだろう。
(新刊JP編集部)
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