出版不況が叫ばれている昨今、ビジネス書もその例外ではなく、10万部を超える本はひと握りだ。また、新刊の出版点数が増え続ける中で、ロングセラーとして残る確率は減っているのが実情である。
こうしたなかで、2004年の発売以来順調に版を重ね、シリーズ累計22万部を突破しているロングセラーがある。『一冊の手帳で夢は必ずかなう』(熊谷正寿/著、かんき出版/刊)だ。
著者の熊谷氏は、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」を使った企業プロモーションを行い、現在、動画再生数がまもなく100万に届く勢いで話題となっているGMOインターネットグループのトップだ(なお、動画はAKB公式ビデオとしてYouTubeにアップされている)。
手帳術はビジネス書の中の一大ジャンルだが、その中でも息の長い売れゆきを見せている理由を、探ってみた。
スマートフォンやタブレットといったデジタルデバイスによるスケジュール・タスク管理が全盛のこの時代、どうして熊谷氏は手帳というアナログツールにこだわるのだろうか。
そこには2つの大きな理由があるようだ。
まず、「手で書く」という作業の大切さだ。自分の手で文字を書くことによって、その文字には自分の思いが強く反映される。
また、大切なことをインプットしたいときは「書いて覚える」ことが基本。デジタルデバイスは大量の情報をすぐに記憶させることができることが大きな武器だが、作業が手軽になりすぎて、記憶させたことすら忘れてしまうこともある。
文字を書くということは意外に労力がいる。だからこそ、自分の文字として書かれたものは自分にとって大事な言葉になる、と熊谷氏は力説する。
もう一つの理由は「読み返し」が楽であるということ。常に手帳を持ち歩いていれば、読み返すことはたやすいし、繰り返し何度も読むことで自分の頭脳にすべきことを潜在意識に刷り込むことができる。
この「手で書く」「持ち歩いて読み返しが楽」、この2つは頭の整理に有効なのだ。
もちろん、デジタルデバイスも活用する。たとえば情報収集はアナログよりもデジタルの方がいい。一瞬で疑問が解決することも多いし、何かを分析して考察したいときは大きなヒントとなる情報を提供してくれるかもしれない。これらは仕事の効率化に寄与している。
しかし、じっくりと情報を吟味したいときは、プリントアウトするといい。赤いペンで気になる箇所に線を引いたり、メモをしたりするのは、やはりアナログが強い。デジタルとアナログを両方使い分けることで、より効率的なインプットが可能になるのだ。
熊谷氏は手帳を「自分の夢をかなえるツール」として活用すべきだという。手帳に自分の文字で、将来の目標ややりたいこと、人生の計画などの「夢」を書いていく。それを常に持ち歩き、繰り返し読み返す。手帳は夢実現の精度を高めるためのツールとなるのだ。
なお本書は、今年9月に電子書籍化され、Amazon Kindleその他で発売されている。この電子書籍版は熊谷氏によって大幅な修正・加筆が加えられており、2004年当時にはなかったデジタルデバイスについて、など内容がアップデートされている。しかし、いくらデジタルが進化し、便利になっていっても、熊谷氏はそのスタンスを変えない。現在でも手帳を愛用しており、「手帳をデジタルに置き変えてはいけない」と読者にメッセージを送っている。
自分の手で書いた文章でいっぱいになった、手帳という人生の羅針盤。大切なものだからこそ、何度も読み返すもの。デジタル全盛のこの時代に自分の手で文字を書き込み、作り上げるアナログ手帳を推奨する本書は、これからも変わらずロングセラーを続けるのだろう。
(新刊JP編集部)
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