子どもにはありのままの姿で、健やかに育ってほしいというのが、親の願い。
しかし、これは簡単ではありません。
ありのままの姿でいるには、「自分は自分でいいんだ」という自己肯定感が必要です。幼少時に自分の存在をまるごと受け入れられた経験がないと、なかなかこの感覚を持つことができず、他人と自分を比べて落ち込んだりしてしまいがちになります。
『おへそのさき』(入江富美子/著、のぶみ/イラスト、SHICHIDA BOOKS/刊)は、この「自己肯定感」を子どもの心に育むのに一役買ってくれる絵本です。
今回は、作者の入江さんにお話を伺い、子育てで大切にすべきことについて語っていただきました。その後編をお送りします。
―最近の子育てについて、何か訴えたいことはありますか?
入江「今は子育ての情報も多く、子どものためにも正しい子育てをしたいと思うがゆえに、その通りにできないと、自分を責めてしまったり、他の家庭と比べて、自分の子育ては間違っているんじゃないかと悩むこともあると思います。お父さん、お母さんにとって、子育て中は大変なことも多いので、何とかホッとできる時間を持って、“よくやってるな”と自分を褒める時間も大切にして欲しいです。自分にやさしくできると、子どもにも優しく接することができる、と思うので」
―子育てのなかでの絵本の役割についてお考えを伺えればと思います。
入江「私の父は、私が5歳の時に亡くなってしまったのですが、それまで毎晩絵本を読んでくれていて、私は今でもそれを一言一句覚えています。読んでくれていたものは『桃太郎』など、一般的な絵本なんですけど、絵本は親子が共通のものを通じて一緒に時間を過ごせる大事なものだと思います。
私も子どもが小さい頃は絵本を読み聞かせていたんですけど、将来あの子たちが悩んだり、反抗期になった時には、もう一度読んであげようと思っています。そうすれば忘れていた大事なことを思い出せるんじゃないかと思うので」
―入江さんはお子様に読み聞かせる絵本をどのように選んでいましたか?
入江「子どもに、言葉でいろいろ教えることも大切ですが、絵本は、楽しみながら、人生で大事なことを親子一緒に感じながら知ることができます。ですから一緒に楽しめる本を選んでいましたね。家をちょっとした図書館風にしたいと思っていたので、いろいろな本を買って置いていました」
―子育てにおいて、最も大切なことはどんなことだとお考えですか?
入江「どなたもおっしゃいますけども、子どもと一緒に親も育っていくということだと思います。子どもから教わることは本当に多くて“子どもは師匠だな”と思い始めてから、私は気持ちがずいぶん楽になりました。だから、一方的に自分の方が上だと思わないようにしています」
―これまで、子どもから教えられた場面としてどのようなものがありましたか?
入江「ある時、学校の先生が、「娘さんがいつもお友達の車いすを押してくれるんですよ」と教えてくれたので、つい“えらいね”と娘を褒めてしまいました。
すると、娘は“偉いなんて言わないで。褒められたいからやってるわけじゃなくて、友達だからやってるんだから”と。ハッとしましたね。娘からしたら当たり前のことをしているだけだったんです。
あとは、私が働いているので、周りの方が“子どもさんたちは寂しいんじゃないの”って気づかってくださるので、子どもたちに寂しくないか聞いたことがあったんです。そしたら“勝手に私らをかわいそうな子にせんといて”って言うんですよ。目が覚める思いでした。大人が子どもを“かわいそうな子”として扱うことは、その子を”かわいそうな子“にしてしまうんだなと思いました。
子どもに対して、一緒に生きる仲間という感覚を持つことはすごく大事だと思います。それは子どもから教えられたことですね」
―最後になりますが、子育て中の方々に向けて、メッセージをお願いできればと思います。
入江「この絵本を通じて、親の方は子どもがお腹の中にいた時の気持ちを思い出せて、その時期の思い出話を親子でできるきっかけにしていただけたらと思います。加えて、一緒に住んでいるかどうか、生きているかどうかに関わらず、おじいさん、おばあさんはこういう人だったんだよ、という風に、これまでつながってきたご先祖様の話にもつながればうれしいです。私としては“お天道様が見てる”という感覚を感じていただきたいですが、それが正しいことだから信じないといけない、のではなく、この本を通して、目に見えない世界の、一つの観点を増やすきっかけとして楽しんで捉えていただけたらと思います」
(インタビュー・記事/山田洋介)
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