センター試験も終わり、本格的に受験シーズンが始まっています。
受験生のなかには、志望校に合格した後どのような4年間を過ごすかという計画がある人もいれば、特に何も考えていない人もいるはず。
必ずしも計画を立てる必要はありませんが、ただなんとなく日々を過ごすだけではアッという間に終わってしまうのが大学生活です。もし、まだ入学後のことを考えていないのなら、何かに思いきり打ち込んでみるのも一つの方法かもしれません。
『良いことに上限はないんだ』(ダイヤモンド社/刊)には、東京理科大学ソフトボール部の創部から全国大会常連となっている現在までの35年間が、長年指導者として部を率いている丸山克俊さんの視点から描かれています。
全国大会の常連校といえば、スポーツ推薦で有力選手を集めているイメージが定着していますが、東京理科大にはスポーツ推薦制度がありません。また理工系の総合大学ということで、入学してくるのは勉学志向の強い学生がほとんど。スポーツで全国大会を目指そうなどという学生はまず入ってこない大学なのです。
そういった環境ですから、当時理工学部の助教授だった丸山さんがソフトボール部を立ち上げた時は練習グラウンドすらなく、練習場は学内の空き地を学生たちが自分で整備して作ったそう。もちろん、初の対外試合はボロ負けでした。
しかし、当時から彼らの目標はインカレ優勝、つまり全国制覇でした。
そこから、猛練習が始まります。授業が終わった夕方から暗くなるまで一通り行い、陽が落ちてからは暗いなかで遠投の練習が始まります。ナイター設備などありませんから、あたりは文字通り真っ暗闇です。
それだけではありません。「人間関係の基本中の基本を凡事徹底する」をモットーに、挨拶や時間厳守、約束事を守ることなど、人としての基本を誰よりも徹底してやることを丸山さんはチームに徹底させました。もちろん、グラウンドでは常に全力疾走です。
学業へのウエイトの高く、レポートと試験の成績次第では4年生でなくても留年してしまう大学ですから、ソフトボールとの両立は並大抵ではありません。
最初は学生がついてこれなかったり、衝突してしまうこともありましたが、どんなに学業で忙しくても練習を続けた結果、彼らは徐々に力を蓄え、創部四年目の1980年、ついにインカレ出場を果たしたのです。
その後、東京理科大学ソフトボール部はインカレ出場の常連となりますが、未だ優勝はなし。しかし、実績もなく能力もない選手たちが、学業との両立に苦心しながら知恵と工夫、そして練習によって強豪校を破り全国制覇を目指す。その目標に向かって4年間を戦い抜いた選手たちの学生生活はとても充実したものだったはずです。
本書からは、今も総監督・顧問として同部の指導を続ける丸山さんと、35年の歴史のなかの4年間をそこで過した学生たちの熱気がびしびしと伝わってきます。それは、まだ4年間の過ごし方を決めていない受験生や、のんべんだらりとした生活に慣れてしまった大学生に、大学生活というかけがえのない時間の過ごし方を考えさせてくれるにちがいありません。
(新刊JP編集部)
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