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25歳で東証一部上場 気鋭の実業家のビジネス観とは?

 この秋のビジネス界の大きな話題の一つが、アルバイト求人情報サイト「ジョブセンス」などを運営する株式会社リブセンスの東京証券取引所一部上場だ。社長の村上太一さんはなんと25歳で、東証一部上場の社長最年少記録だったグリー株式会社の田中良和さんの33歳を大きく下回っている。そして8月には村上さんの半生がつづられたビジネス書『リブセンス〈生きる意味〉』(上阪徹/著、日経BP社/刊)が出版された。

 『すべてが見えてくる飛躍の法則』(アスペクト/刊)の著者である石原明さんの対談連載、第一回となる今回は、その村上さんをお迎えして行われた。
 石原さんが本書で提唱している“人称”とは、「人称」とは発話の話し手、聞き手、第三者を区別するためのものだが、ここでは「人称」をビジネスに役立てるために新たに解釈。一人称は「自分目線」、二人称は「相手目線」、三人称は「まわり目線」、四人称は「マーケット目線」というように、ビジネスにおける「視野の広さ×時間軸」の尺度として捉えている。
 では、村上さんの人称の高さはどういったところから来ているのか。石原さんが気鋭の経営者に深く切り込んでいく。(以下敬称略)

■「小学校の頃はいつも通知表にニコニコしていると書かれていた」

石原「今回の対談相手を探していたときに、知り合いに誰がいいかな?って聞いたら、多くの人が村上さんを勧めてくださったんです。私も第一回ということで、ものすごく人称の高い方にお願いしたかったので、さっそく村上さんの本を読ませていただいたのです。小さな頃から高い人称の視点を持たれていたんですね!」

村上「そう言っていただけて、恐れ多いですね(笑)。でも、確かに子どもの頃から客観的に自分を見ていたように思います」

石原「お会いしたときの笑顔が、すごく人称が高いんですよ。どんな人にも好かれると思いますよ。その笑顔は意識されているのですか?」

村上「いやー(笑)、子どもの頃からずっとなので癖になっているんだと思います。小学校の頃はいつも通知表の先生コメント欄に『いつもニコニコしている』って書かれていましたね」

石原「すごくいいですね。今は多分、最年少上場などで注目を集めていらっしゃるから、ご自身だけでなく会社も、世間からどう映るかという感覚を持つ必要があるでしょうし、そういった視点を身につけておかないと、知らず知らずのうちに敵をつくってしまっていたということもありますからね。でも、その笑顔を見たら敵対心も消えます(笑)」

村上「ありがとうございます。でも、本当に意識していないんですよ」

石原「本当に? 絶対に意識していると思うんだけど(笑)本で読んだイメージから、抜けがないやり手の経営者だと思って会ってみたら、最初の笑顔にやられる、と。色々な企業や経営者の方は負けますよ。みんなファンになっちゃいますよね!」

村上「ああ、でも、すごく応援していただけますね」

石原「そうだと思います。だから見た目の印象ですでにシステムを作られているんですよ。私自身も本では難しいことを書いていますが、リアルで会うと優しいと驚かれますし」

村上「ああ、そうですね。僕もお会いして印象が違う! て感じました」

石原「実はキャラクターが被っているんですよね(笑)」

■「不便な問題を解決できないだろうかという想いが根源」

石原「質問なのですが、村上さんは、自分が何をビジネスにしていると思っていますか? 何系のビジネスをしている、といいますか」

村上「アルバイト求人情報サイト、という答えではなくて、その奥にあるものですよね。情報の非対称性をなくす、情報の整理をする…何業といえばいいのかな」

石原「じゃあ、人材系のビジネスをやっている意識はないんですね」

村上「あまりないですね」

石原「つまり、ビジネスを違う目線で物事を見ているということですよね。世の中の不最適なところを直して、人々を幸せにしていこうと考えていらっしゃる」

村上「そうですね。ああ、でも、もっと根本的なところを探ると、不便な問題を解決できないだろうかというのが原点ですね」

石原「それはいつ頃から考えていたのですか?」

村上「高校生の頃ですかね。ビジネスプランを考えていたとき、ビジネスの基本ってなんだろうとふと思って、結局は不便さや問題の解決だ、と。本を読んだりしながら、世の中に定着したビジネスを見ると、そういうものが圧倒的に多かったんですよ。例えば、ヤマト運輸の小倉昌男さんの『小倉昌男 経営学』とか」

石原「小倉さんは国と戦いましたからね」

村上「そうなんですよね。読んでいてかっこいいなー、と。そもそも何が不便なのか、何が問題なのかに気付けていない人が多いと思うんですけど、実はそれって無意識の中で結構あって、ビジネスの多くはそういう困ったレイヤーを解決してきたんだと思います。だから、そういったことを見つけて解決してあげるというビジネスに、最終的に行き着くんじゃないかと思うんです」

■「みんなが頑張っているから儲かっているという状況は最悪」

石原「私はコンサルタントを10数年やっていますが、専門分野もサービス内容も具体的に決めていなくて、その会社に行って一番重要なことをすれば良いと思っています。また、あまり人に頑張りを強要したくないので、しくみ化というのをどんどん考えていくと、どうしてもビジネスモデルに行きあたってしまうんですね。
以前、外資系教育会社で企業研修の営業をしていたときに、儲かっている会社の社長に『どうして儲かっているのか』と聞いてみたんです。そしたら、『儲かるようにしているから』と言い出したんですよ」

村上「それはすごいですね」

石原「その社長は『みんなが頑張っているから儲かっているという状況は最悪』とおっしゃっていて、そもそも儲かる仕組みの上で働いているから、社員が楽しいと思えるし、勝てると思っているからみんな一緒に頑張るんだ、と。それを聞いて、私は研修をしながらずっとビジネスモデルばかり見ていたんです」

村上「はい」

石原「そこで見えてきた共通点をベースにして、いろいろな経営者にお話をうかがいながらブラッシュアップしていく、みたいなことをずっとやっていったところ、ビジネスモデルオタクみたくなっていきまして(笑)。だからね、うちの会社は営業を一切しないんですよ」

村上「じゃあ、紹介を受けて?」

石原「いえ、実は紹介も取っていないです。マーケティングの仕組みさえ作ってしまえば、売りに行くより買いに来てもらう方が楽です。楽に仕事をしているのですが、最近よく考えるのが、ビジネスモデルの中にどういう風なシステムを導入できるかによってレベル感を変えられるという部分です」

村上「人間がやっているところをシステム化する…」

石原「今、若くて優秀な方々がウェブシステムをすごく理解していて、人数が少なくてもしっかりとしたビジネスを創っていますよね。村上さんは、先ほどお話した世の中の不便さを解決したり、人を幸せするということにウェブシステムを絡めていらっしゃいますが、どうやってそれは築き上げてきたんですか?」

村上「それは、常に最善の方法はなんだろうと考えた結果ですね。ただ、私は、システムは常に手段だと考えていて、システムを入れれば解決ではないということは考えています。逆に最適化されない部分も出てきますから、あえて人が差別化になる部分もあります。だからシステムは手段なんですよね」

石原「なるほど、世の中の使えるものを取捨選択し、組み合わせて、一番良い形にすると」

村上「まさにそんな考えです。ゴールを達成するための手段の一つにシステムがあると思っています」

石原「なるほどね。ちなみに、システムはどのくらいお詳しいんですか?」

村上「プログラムを書くことはできないんですよ。でも、どういう風に組み立てられているのかについてはよく知っている方だと思います。高校時代から、そんなにレベルは高くないんですけどシステムアドミニストレータ試験とか、そういう資格をとったりしていましたから」

石原「小学校のときおじいちゃんにパソコンを買ってもらって勉強をした、と。それを単なるパソコンとして捉えるのか、少し違う見方をして、パソコンを通して何をどう変えるのかという風に捉えるのかで、使い方も結果もかなり違ってくるんじゃないかと思います」

村上「そうなんですよね。目の前のものに捉われない発想は大事ですよね。『20歳のときに知っておきたかったこと』っていうスタンフォード大学の教授が書いた本かな、本の中にあったエピソードなんですが、大学の授業で学生グループに5ドルを渡す、と。それで、1週間以内に5ドルを最大化できるような仕組みを考えるように指示したんです。
ちなみに、この5ドルが入っている封筒を一度開けたら、それは絶対に2時間以内に使わないというルールがあって、そんな状況で1週間後、どうなったか、というと、一番稼いだチームは最後まで封筒を開けなくて、その授業の場所をスポンサーに売ってお金を稼いだんです。目の前に5ドルがあって、それを元手にビジネスを考えるとなると、どうして5ドルを使わないといけない!って気持ちになるじゃないですか。でも、実は大事なのはその5ドルを使うことじゃなくて、視点を幅広くもつことなんだと思います」

石原「その本を読んだのは、いつ頃のことですか?」

村上「これは結構最近です。ハッとしました」

石原「あ、同じことしている!と」

村上「そうですね。あとは、目の前のことに捉われちゃ駄目だな、と実感しました」

<後編は明日配信!>

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対談を行う石原氏(左)と村上氏(右)

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