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旬の食べ物を最大に活かす。奥深すぎる「薬膳」の世界とは

  • 書名 大人気レストラン「然の膳」の世界一美味しいカンタン薬膳ごはん
  • 監修・編集・著者名然の膳、田中奏多(監修)
  • 出版社名アスコム

薬膳というと、どんなイメージを持つだろうか。
手間がかかるとか、健康には良いけれども味が...といった感想を持つ人は多いかもしれない。

『大人気レストラン「然の膳」の世界一美味しいカンタン薬膳ごはん』(田中奏多監修、アスコム刊)は、体に良くておいしい食事をコンセプトに、医療施設や自治体を中心に全国展開するレストラン「然の膳」がプロデュースしたレシピ集だ。
「然の膳」は薬膳をベースにしたメニューを提供しているが、「美味しい」と評判を呼び、現在急拡大している。確かに、このレシピ集を読むと「これが薬膳なの?」と思えるような美味しそうなレシピがぎっしり。さらに健康にも良いというのだからぜひ試したくなる一冊だ。

今回は「然の膳」を手掛ける株式会社フードテックジャパンから社長室広報担当の山下観月さんと開発事業部の福田哲也さんに本書の裏側、そして薬膳の考え方についてお話をうかがった。

(新刊JP編集部)

■旬の食べ物、素材の組み合わせ...奥深くて「美味しい」薬膳の世界。

――さっそく『大人気レストラン「然の膳」の世界一美味しいカンタン薬膳ごはん』は「薬膳ごはん」のレシピ集ですが、「これも薬膳なのか」と思うような、美味しそうな料理の写真が並んでいます。本書を作るにあたって工夫した点、気を付けた点はなんでしょうか。

山下: 大きく2点ありまして、まずは誰でも薬膳のことを知ることができて、スーパーで手に入る食材で簡単に薬膳料理を作ることができるというところを意識しました。

もう一点は、「薬膳だけれども美味しい」ということです。写真だけでも美味しそうに見えると思いますが、食べても美味しいです(笑)。薬膳は続けていただかないと効果が出ないので、続けてもらうためには美味しい料理でないといけないというところで、こだわりました。

――確かに薬膳と聞くと、「味はそこまでではないけれど、健康に良い」というイメージが強いですが、この本を読むと薬膳の本当の意味が分かってびっくりしました。例えば「トンカツ」と「キャベツ」の組み合わせであったり、定番の組み合わせには薬膳的な意味があって、健康に配慮されているのだなと感心しました。

山下:そうですね。定番の組み合わせには、その季節や土地の風土にあった食材が使われることが多いのですが、健康にも非常に配慮されています。例えば、刺身とワサビやシソの組み合わせは、なまものである刺身には食あたりのリスクがありますから、殺菌効果のあるワサビやシソが定番の付け合わせになるのは自明です。こうした昔からの知恵が「定番」として今に伝わっているんですよね。

他に、お酒を飲まれるときにレモンを絞ったり、梅干しを入れたり、あとは酢の物がよく居酒屋さんでお通しとして出ることがありますよね。実はこれも定番の付け合わせで、薬膳の考え方によるものなんです。

――そうだったのですか!

山下:はい。薬膳には「五味五性」という考え方があります。これは食材を5つの効能に分けるものなんですけど、お酒はその5つの中でいうと「辛」に分類されます。この「辛」の食材を食べ過ぎると肝臓に悪影響を及ぼすとされているんです。

――実際にお酒の飲みすぎで肝臓を壊したりする方もいますよね。

山下:そうですね。この肝臓への悪影響を調和するのに、「酸」の食材を一緒に摂ると良いとされていまして、それがレモンや梅干し、そして酢の物ということなんです。

このように、「定番の組み合わせ」と呼ばれているものは、意外と薬膳に考え方に基づいているものがあったりするんですよ。

――他にもどんな組み合わせがあったりするのですか?

山下:あとは、お寿司では酢飯を使いますけれど、これも生魚に対する殺菌効果が期待できます。他に生姜焼きもそうですね。豚肉は体を冷やす食材なのに対して、生姜と玉ねぎは体を温める食材ですから、この2つが合わさると身体を冷やし過ぎず温め過ぎずという料理になるわけです。

――勉強になります。では、今回のテーマである「薬膳ごはん」は、そういった考え方に基づいてつくられているごはんということでしょうか。

山下:そうですね。もっと言うと「薬膳」の考え方自体が東洋医学に基づいています。例えば風邪を引いたときに、薬を処方してその風邪を治すのが西洋医学の考え方で、病気になりにくい体をつくるというのが東洋医学の考え方です。だから、薬膳ごはんというのは、病気になりにくい体をつくるための料理と言えます。

――普段のごはんを「薬膳ごはん」にするコツってあるのでしょうか?

山下:すぐにできることと言うと、旬の食材を取り入れることです。季節の旬の食材には、その季節に起こりやすい体の不調を緩和させる効能があるものが多いんです。

例えば夏野菜として有名なキュウリやトマトは、体の熱を取る効果があります。逆に冬ですと、お鍋に白菜を入れることが多いと思うのですが、白菜は体を温める効果があるんです。このように、旬の食材をまず意識してもらうことが薬膳のスタートかなと思います。

――なるほど。そういった食材の効能は覚えておくと便利そうですね。

山下:はい。ただ、そうした食材の効能を覚えるのも結構大変だと思うんです。だから、まずは旬の食材や好きな食材から入っていってもらえると分かりやすくなる気がします。

そして、その時の身体の不調に合わせてメニューを組めるようになると、ご家族やご自身のためにもなると思います。少しずつ覚えていってもらえばいいかなと思いますね。

――開発事業部の福田さんにもお話をうかがいたいと思います。メニューを開発する際のエピソードがありましたらぜひ教えてください。

福田:基本的には薬膳の考え方に基づいていますが、先に素材の組み合わせを考えてから、どんな味にするのか決めるようにしています。

だから、作った後には試食して、意見をうかがいますね。そこで味が薄かったり、美味しくないと言われたら、変えていきました。

――本書の数あるレシピの中で、福田さんおすすめのレシピがありましたら教えてください。

福田:「黒ごまとにんにくのソース」です。これは何にかけても美味しいソースで、さらに健康にも良い、まさに「かける薬膳」です。お肉にも野菜にもお魚にも、何でも合いますよ。

――ありがとうございます。他にこのレシピ集でこだわったポイントがありましたら教えてください。

福田:これまでにない発想を活かせたらと思って作りましたね。「黒豆茶の和風チャーハン」は「かつお粉」を入れて和風味にしてみたり、家庭で作る料理に一つ何か加えることで大きく味が変わるレシピを作れたらと思っていました。

(後編に続く)

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