年末年始の休暇はゆっくりすごせる反面、普段考えなかったことを考えてしまう期間でもある。
特に今の仕事が合わなかったり、職場の人間関係がうまくいっていなかったりすると、「この会社にこのままいてもいいのかな」と、「退職」の二文字が頭をよぎった人もいるかもしれない。
ただ、この「退職」がなかなか曲者だ。入社してまだ日が浅かったり、職場が人手不足だったりすると、退職の意志を言い出しにくいものだし、会社が何かと理由をつけて退職を認めないケースもある。あなたの会社は、すんなりと退職を受け入れてくれるだろうか?
『退職代行マニュアル 明日から会社に行かなくていい』(桐畑昴著、扶桑社刊)にこんな例が挙げられている。
不動産の飛び込み営業をしていたAさんは、会社に課せられる高いノルマに苦しみ、上司は日常的に、ノルマを達成できないAさんに対してパワハラまがいの暴言を浴びせていた。
そんな生活を終わりにすべく退職を申し出ようとするが、同じように退職しようとした同期社員が上司に呼び出され「辞めるってどういうことだ!」と深夜まで5時間以上にわたって責められているのを見ると、なかなか退職の意志を示すことができない。
辞めようとする人間に対して責め倒すことで組織につなぎとめようとするケースだが、仕事の成績が悪く、会社や上司に負い目を感じていたり、気が弱い人は、なかなか辞意を伝えにくいものかもしれない。
叱責するだけではなく、「人手不足なのに勝手に会社を辞められると、会社が回らなくなる。損害を賠償しろ!」と脅すパターンや、退職を願い出た従業員と仲のよかった同僚に対し、上司がLINEのやり取りを見せるよう強要するなど、嫌がらせをして追い詰めるパターンなどもあるという。
退職をさせないように強硬な態度をとる会社は厄介だが、注意したいのは退職の意志は受け取るものの、のらりくらりと引き延ばして実際には退職させないようにする企業もある点だ。本書の例をピックアップしよう。
看護師のBさんは愚痴や悪口が蔓延する職場の雰囲気が合わず、看護部長に退職の意志を伝えた。看護部長は「あなたの気持ちはわかったから、いったん病棟を異動して、それでも辞めたいという気持ちが強いなら考えましょう」とは言ったものの、一向に話を前に進める気配はなし。以降はBさんが何を言っても「異動して環境が変われば、また楽しく働ける」とはぐらかすばかりだという。
何度も辞めたいと言っているのに「環境を変えれば...」とあくまで組織に残る前提で話を進めるこの手法も、なんとなくうやむやになったまま時間ばかりが過ぎてしまう危険がある。
実はここで取り上げた
・退職希望者を会社が叱責する
・退職希望者を脅したり、嫌がらせをする
・退職をいつまでも引き延ばさせる
というのは、いずれも退職代行サービスの現場で実際にあった例。どの職場もかなりブラックだが、こういう会社で働いているという自覚がある人は、退職を自ら告げるよりも手続きがスムーズにいく方法があると知っておくべきかもしれない。
本書では、退職代行サービスがどのようなものか、どんなことができて、逆にできないことはどんなことか。どんな人が利用しているのかなど、このサービスについて詳細に解説されている。
年末年始休暇で気持ちが揺れて「転職したい。今の職場を辞めたい。でも言い出すのは怖い」と考えた人は、一読してみると今後自分がどう動くべきかがわかるはずだ。
(新刊JP編集部)
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