まずは自問自答してみてほしい。
自宅のポストに小中学校の同窓会の招待状が来ていたら、あなたは参加するだろうか?それとも不参加だろうか?
もし不参加だとしたら、その理由はなんだろうか?
もちろん、誰しもにとって同窓会は「楽しみな会」というわけではない。
たとえばクラス内でいじめられていた人は、わざわざ当時の人間関係の中に戻りたくないはずだ。クラスメイトと結婚したが、離婚するなどして「会いたくない人」ができてしまった人も同様だ。あるいは太ってしまったり、薄毛になってしまったりと、風貌が当時と変わりすぎてしまった人も、同窓会の場で昔のノリそのまま無遠慮に突っ込まれるのは勘弁してほしいところだろう。
しかし、そうした要因だけでは説明がつかないほど、今「同窓会に行きたくない人」が増えているのをご存じだろうか?
『同窓会に行けない症候群』(鈴木信行著、日経BP刊)は、学年全体やクラス全体といった大規模な同窓会が減り、小規模化していること。そして同窓会そのものに行きたくない人が増えている現実を指摘。その理由を考察している。
SNSが普及し、あえて同窓会を開かなくても親しかったメンバーと集まりやすくなったこと。そして個人情報保護法によって、大規模な同窓会に必要な名簿が作りにくくなったこと。これらは同窓会の小規模化の理由として理解できる。しかし、「同窓会に行きたくない人」が増えたのには、また別の背景があるようだ。
どんな人にでも多少の見栄があるはずだ。
たとえば、小学生時代、中学生時代はクラスの中心だったのに、40代、50代となった今、会社で出世できず、年下の上司に使われている状況だとしたら、同窓会はどうにも居心地の悪い空間に違いない。
他の同級生たちはそれぞれに社会で活躍して、自分の地位を築いている(と予想される)なかで、今の自分が引け目を感じずに済むだろうか。おそらく、そんなことはあるまい。人は数十年ぶりにあった級友に「上司が年下でさぁ」とはなかなか言えないのである。
価値観が多様化した現在でも、社会人(特に男性)にとって自信の根源となるのは依然として仕事なのは否定できない。
多くの日本企業で「上がつかえている」と言われ、年功序列のシステムが過去のものとなり、会社の中で出世していくことが20年、30年前と比べるとはるかに難しくなっている現実は、すなわち「自信がない人が増えている」ということでもあるのではないか。それが、「同窓会に行きたくない」人が増えた理由になっているのではないか、と本書では仮説を立て、様々な実例を通してこの仮説を検証していく。
◇
「会社で出世しなかった」「起業に失敗した」「好きなことを仕事にできなかった」など、社会的・経済的に自信を持てない人が同窓会に出席したがらないのは理解できるところだが、一方で「同窓会に行きたい人」「幹事をやってしまう人」はどんな人なのだろうか?本書ではこのテーマについての考察もされている。
懐かしい人との再会の場であると同時に今の自分を試される同窓会は、卒業からこれまでの人生の「答え合わせ」の趣もあり、人にとっては残酷な行事かもしれない。
最後にもう一度。
あなたは同窓会に行きたいだろうか?
(新刊JP編集部・山田洋介)
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