現在の日本では、金利はほとんどゼロ。預金や貯金だけでは資産形成としての効果は極めて低く、給料も上がらない時代ということで、お金についてのライフプランがどんどん立てにくくなっていることは多くの人が実感しているところだろう。
だからこそ投資の重要性が叫ばれるが、「そこそこの利回りで、確実性のある投資先」を見極めるのは簡単ではない。
『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資』(かんき出版刊)の著者、太田創氏はこの問いに対して「30年積み立てるなら米国株式を対象とする投資信託」という解を提唱している。
なぜ日本国内への投資でなく、リターンの大きい新興国でもなく、米国なのか。そこには太田さんが長年の投資経験から導き出した確かな理由がある。
少子高齢化の日本で、今後国内消費が大きく伸びることは考えにくい。外需頼みで経済が成長する可能性はあるが、当然ながら国外の情勢に影響されやすい。株価は未来を織り込んで動くため、このように将来の見通しが厳しい国の株価は上がりにくいと太田氏はいう。
一方で、米国の年齢別の人口比率は理想的な「つり鐘型」をキープしており、人口も増え続けているため、今後も国内消費の伸びが期待できる。長期の投資先を考えるうえで、これはまず頭に入れておくべきことだ。
また、株価への考え方の違いも、太田氏が米国の株式に投資すべしとしている理由の一つ。日本の個人金融資産は52.5%を現預金が占めるが、米国はわずか13.1%。また個人金融資産に占める株式と投資信託の比率は日本が14.9%なのに対して、米国は48%と高い。これは、株価の上昇が米国に住む人の「幸せ」に直結することを意味する。
だからこそ、米国は企業も中央銀行(FRB)も株価を維持させることに必死になり、企業経営にしても金融政策にしても、「最終目標は株価を上げることである」という意識が徹底している。リーマンショックしかり、これまで米国の株式市場は幾度となく株価の暴落を経験しているが、そのたびに暴落前の水準を取り戻しているのには、こうした背景がある。下がっても必ずまた上がるポテンシャルのある市場があるということは、投資家にとって大きな安心材料なのだ。
とはいえ、資産形成のための投資先を探す人にとって最も気になるのはリターン(収益率)のはずだ。かつては「長期で投資するなら(想定リターンがより高い)新興国の株式市場が良い」と言われた時期もあったが、新興国への株式投資はとにかく値動きが激しく、リスクが高い。マーケット規模も小さいため、国際金融市場で大きな動きがあると先進諸国の投機マネーが一気に引き、すさまじい株価の下落が起こる。新興国市場は長期的には成長が期待できるが、資産運用の核にはなりえないと太田氏は言う。
一方で、日本株の過去30年間で各月を基準とした1年間の平均リターンは「+1.5%」である。1990年のバブル崩壊以降、株価はようやくピークの半値からやや上に戻した程度で、リターンが低すぎる。ちなみに同時期の米国株の年平均リターンは「+9.5%」。米国株は、高いリターン率と市場の成長性という両者の長所を併せ持っているのだ。
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では「米国の株式を対象とする投資信託」とは、どのように始めて何に運用すべきなのか。本書のメインテーマはそこだ。太田氏はこのテーマについて、米国株式を投資対象とする投資信託1本に絞って、30年間の積み立て投資で3000万円を作るノウハウを解説している。なぜ投資先を分散させずに米国に絞るのかについての知見も興味深い。
老後のためにまとまったお金を用意しておくために、投資による資産の運用は必須になりつつある。これから投資を始める人も、すでに始めているものの新たな投資先を考えている人も、本書からはこれまで知らなかった知識と発見を多く得ることができるはずだ。
(新刊JP編集部)
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