2014年に京都大学経済学部で始まった特別講義「企業価値創造と評価」は、日本を代表する一流企業の経営者が登壇し、その経営哲学、経営戦略を自由に述べる。
著名経営者の話を直接聞ける貴重な機会ということで、学生だけでなくビジネスパーソンからも注目を集めてきたこの講義。『京都大学の経営学講義Ⅲ 経営者はいかにして、企業価値を高めているのか? 京都大学経済学部・人気講座完全聞き取りノート』(ダイヤモンド社刊)はシリーズ3作目となる講義録である。
本書の著者の一人で農林中金バリューインベストメンツ常務取締役の奥野一成氏は、この講義を通して伝えたかったこととして投資家目線を持つことの重要性を挙げている。
投資家目線を持つといっても、単に証券の売買をしろということではない。
「投資」というと、労働をせずに楽をして儲けるというイメージがあるが、利益を出そうと思えば知らなければならないこと、考えるべきことは山ほどある。ある企業に投資するなら、その企業が何を作り、何を売っているのか。競合はどんな企業でどこに違いがあるのかは最低でも知っておくべきだろう。
それらの情報から総合的に投資すべきかを判断するわけだが、このように投資家として企業を見る目を磨くことは、就職活動やビジネスでも威力を発揮する。よくビジネスの世界では「経営者目線でものを見ろ」と言われるが、様々な会社とビジネスをして成果を出していくためには投資家目線もまた必須なのだ。
その意味で、経営者が自社のビジネスや経営理念を語るこの講義は「投資家目線」を身につける格好のチャンスといえる。
昨年までゲーム機器大手の任天堂で社長を務めていた君島達己氏が講義に持参したのは黒焦げになった「ゲームボーイ」の写真。これは1990年代湾岸戦争時に米兵が戦場に持参したものだ。
驚きなのは、黒焦げになり形が歪んでしまってもスイッチを入れれば起動すること。「品質の確保にはかなりのこだわりを持ってきた」と君島氏が語るように、このゲームボーイは任天堂製品の耐久性を物語っている。
また、君島氏は任天堂のキャッシュフローについても言及。任天堂は現金保有が多い会社だが、その理由としてゲーム業界ならではの事情を挙げた。
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本書には、君島氏の他にも四人の経営者の講義が記録されている。いずれも独自のビジネス哲学と経営理念を持つ経営者ばかり。
彼らの発言を知ることは、実際に投資をする人にとってもそうでない人にとっても役立つ「投資家目線」を養う一助となってくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
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