TwitterやFacebookなどでポジティブなことばかり言っている人がいるが、どうも違和感を覚えてしまうことはないだろうか。人間、生きていれば愚痴の一つも言いたくなるときがあるはず。どこか無理をしているように思えてしまうのだ。
『ウツになりたいという病』(集英社/刊)の著者、植木理恵さんは病院の心療内科に勤める臨床心理士だが、近年、受診のため彼女のもとを訪れる人々にある変化が起きているという。 それは、投薬治療を必要とする「本当のウツ病」とは言えない、いわば「ウツもどき」としか形容しようのない人が急増しているということだ。
植木さんによれば、この「ウツもどき」の人たちは少し話を聞くだけですっきりした顔をし、その後、病院に来ることはなくなるという。つまり、自分にウツというラベルを貼ってもらうことで自己満足をしてしまうところがあるというのだ。 しかし、「ウツもどき」は本当の「ウツ病」になる可能性もあり、しっかり対応をしなければいけない。では、どうして「ウツもどき」が増えているのだろうか?
■「ウツもどき」を急増させているのはポジティブシンキング? ポジティブシンキングが持て囃される昨今、弱音や愚痴を安易に吐けない環境に窮屈さを感じている人は多いのではないか。その結果、無理にポジティブに考えて自分を追い詰めてしまい、「ウツもどき」になってしまうこともあるようだ。 人の気持ちはその時々によって変化する。「つねにポジティブな状態でいる」というのはとうてい無理な話だ。でも、過度にポジティブシンキングであろうとする人は、自分の気持ちの変化を受け入れられず、心に負荷をかけてしまう。こうした負荷の積み重ねによって鬱々とした気分になり、一足飛びに「ウツ」とまでは行かなくとも、その予備軍である「ウツもどき」へと陥ってしまうのだ。
ポジティブシンキングは確かに自分の心を奮い立たせてくれるし、周囲にも良い影響を与えやすい。しかし、「ポジティブでいなければいけない」という考えばかりが先行すると、自分の本当の気持ちとのギャップは大きくなるばかりなのだ。 だからといって、ポジティブシンキングを完全にやめてしまうこともいけない。要は適材適所の問題で、正しい使い方をすればポジティブシンキングは自分にとっての武器になる。 植木さんがすすめるのは、あくまでその場しのぎの感覚で使うことだ。仕事やプライベートのここぞという場面で、自分のなかでポジティブシンキングを発動させる。スイッチのオン・オフのような感覚で使うことができれば、自ずと「つねにポジティブでいなきゃ」という気持ちは消え、自分を必要以上に苦しめることはなくなるのだ。そうすることで、自分を「ウツもどき」から遠ざけることができる。
もし、無理をしてポジティブな自分を振る舞っていると感じるならば、一度、生活を見直してみてほしい。そのままにしてしまうと、「ウツ」の引き金になってしまうかもしれない。(新刊JP編集部)
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