一時代前と比較すれば「起業」に対するハードルはだいぶ低くなったのではないか。ITベンチャーが大きな躍進を遂げる一方で、学生などの若者からは「将来的には起業をしたい」「自分で会社を立ち上げて社会に貢献したい」という声が上がるなど、「起業」し「成功」することに憧れを抱いている人も少なくない。
だが、起業をして成功をおさめることはそう簡単なことではない。1年間で誕生した会社の半分がつぶれ、10年後には100社あるとすると6社程度しか残らないという厳しい世界が待っている。
では、成功の道に乗ることができた企業に見られる特徴とはどのようなものなのか?
『起業1年目の教科書』(かんき出版/刊)は起業家支援の分野で実績のある経営コンサルタント・今井孝氏が執筆した、「起業家1年生」を乗り切るための指南書で、準備や計画の練り方、プライシング、マーケティングなど基本的だが欠かせないことを学ぶことができる。
今回は本書の第3章「ビジネスプランの立て方」から、目標を立てるときに意識すべきことをピックアップして紹介する。
■目標は5分で仮決めする
目標を決めるときは慎重にやりたいものだが、本書ではそれを勧めていない。逆に、まずは気楽に目標を仮決めすることを提案している。
なぜなら、目標は変わるものだし、実際に動かないとその目標が良かったかどうかは分からない。さまざまな体験の中で本当にやりたいことが明確になっていくものだ。
だから、まずは5分で大雑把な目標を決めよう。「○月まで起業する」「○○万円稼ぐ」などのレベルでいいのだ。そして、その目標を達成するための行動を起こすと、だんだんと情報が入り、自分のやりたいことがわかってくるだろう。そこから具体的に何をするのかを決めていっても遅くはないはず。情報が集まらないと現実味は湧いてこない。
■行動の足かせになる「無意識」をマネジメントする
目標を立ててもすぐに止まってしまうという問題が起こる原因は、熱意が足りないのではなく「目標の立て方が悪かった」だけだと今井さんは述べる。
この場合、どのようなものが足かせになるのかというと、「無意識」だ。例えば「批判されるようになるのではないか」「バカにされてしまうかも」「失敗するとカッコ悪い」といったことを無意識に思ってしまい、行動に移せなくなってしまうのだ。
目標はもちろん明るい将来を見据えて設定するものだが、それと同時に成功をしたときのデメリットも思いつく限り書きだしてみよう。その上で、「デメリットが起こらない目標」を模索する。
そんな目標があるのか?と思うかも知れないが、うまくいく人は、何でも両立すると思いながら行動しているそうだ。
■どれだけ失敗するのか、あらかじめ回数を決めておく
それでも、起業は失敗に終わる確率が圧倒的に高い。
では成功している人はどのようにやってきたのか? もちろん彼らはずっと成功し続けてきたわけではない。幾多の失敗を乗り越えて行動し続けてきたからこそ成功しているのだ。
しかし、失敗はメンタルを傷つける。損をした、赤字になった、迷惑をかけた、恥をかいた、仲間を失ったなど、さまざまなことが起こる。成功した人たちは心が折れてしまうような状況でも、彼らは挑戦し続けるのだ。
では、強靭なメンタルを持つにはどうすればいいのか。それは客観的に自分を見られることが必須だ。
著者によれば、起業1年目から成功する人は、失敗の回数を決めてスタートするという。実際にどのくらい失敗するのか、想定して数えてみると意外に多くなるのではないか。失敗の回数は改善の回数なのだから、もし起業して失敗続きになったときも「まだ5回しか失敗していない」などと自分の状況を冷静に見つめられるはずだ。
失敗したからこそ学べることもある。その部分はちゃんと覚えておいてほしい。
本書はすでに目標がある人はもちろんのこと、起業というものに憧れを抱いている人でも参考になる知識がたくさん書かれている。
将来的に、○年後に、などの漠然としたイメージを持っている人は、起業というものがより具体的に、そして身近なものになるだろう。
(新刊JP編集部)
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