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日本資本主義の父・渋沢栄一を身近に感じられる小説

 日本の資本主義の父と呼ばれる人物を知っているだろうか。
 その名は「渋沢栄一」。徳川慶喜の幕臣として江戸時代末期にフランスに渡航。帰国後は大蔵省を経て、第一国立銀行の頭取となる。そこではさまざまな企業の設立を援助し、日本の近代化を経済の面で支えた人物だ。
 そんな渋沢栄一にスポットをあてた現代小説がある。

 それが『渋沢栄一の経営教室 Sクラス』(香取俊介、田中渉/著、日本経済新聞社/刊)で、主人公は渋沢栄一と、現代に生きる16歳の高校生だ。

 雷に打たれた大河原渋が目を覚ましたのは江戸時代末期だった。
 父親は脱サラをして会社経営をしていたものの、うまくいきかけるもあっけなく倒産、5億円超の負債を抱えたまま行方をくらましてしまう。
 祖父の知人を頼って木造2階建てに移り住み、心臓の悪い母親のかわりに働くため、定時制の都立高校に転校することになる渋。妹とともに行方不明の父の荷物を整理していると、本数冊とともに一冊のノートを発見する。「Sクラス」と書かれたノートを開いてみると、父の尊敬していた渋沢栄一の言葉が模写されていた。

「われも富み人も富み、
しこうして国家の進歩発達を助ける富にして、
はじめて真正の富と言い得る」

 転校先では、空手をやっていた針生新吾、渋と同じく進学校から転校してきたという緑川沙也香、そんな沙也香に惚れた不良の荒船勝利と出会う。
 しかし、渋にさらなる試練が襲いかかる。母の心臓の病気が悪化し、心臓移植をしないと延命できない事態に陥ってしまうのだ。日本では心臓移植ができず、アメリカに渡らなければいけないものの、その費用は1億5000万円かかるという。
 そんな中、喧嘩に巻き込まれた渋に雷が落ちる。

 意識を取り戻したとき、渋は鳥になっていた。そして、鳥になった自分と唯一話すことができる青年が現れる。
 彼は自らを「渋沢」と名乗る。そう、あの「渋沢栄一」だったのだ。

 未来、現代、過去を横断するストーリー、鳥になった主人公、自分の志に燃える青年・渋沢。ファンタジー要素を含んだ本作は、渋沢栄一のエッセンスを学ぶことができるエンターテインメント小説となっている。
 渋は現代に戻れるのか? 母親の病気はどうなるのか? 沙也香との関係は? この小説で出てくる登場人物はみな若い。各々が志を持っていて、とても瑞々しい作品に仕上がっている。渋沢栄一という人物を身近に感じられるとともに、渋沢の哲学を通して、人生の意味を考えるための智慧を学べる一冊だ。
(新刊JP編集部)

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